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学長挨拶

東京藝術大学学長 宮田 亮平

 東京藝術大学は、我が国唯一の国立総合芸術大学として、創立以来の自由と創造の精神を尊重し、我が国の芸術文化の発展について指導的役割を果たすことを基本目標とし、芸術に関する教育研究の最高水準を維持し続けています。この120余年続く誇りある伝統を振り返るにつけ、歴代教職員、ならびに同窓生の並々ならぬ努力、各界の皆様方の御尽力に深甚なる敬意と心からの感謝を捧げたいと存じます。

 さて、第二期目となる学長に就任して二年目に入りましたが、私は次の点を重要視して推進したいと考えています。一つはこれまで新鮮な芸術をリヤカーに積み、様々なところへ運ぶ行商人の役割を果たすべく努力してきましたが、今後は、芸術を発信し広めるとともに帰りの荷台には街で醸成された芸術を持ち帰るなど、社会連携を含めた双方向の関係を構築することです。

 次に東アジアにおける芸術教育や芸術大学間の交流促進です。2007年度の本学創立120周年記念事業に際し、日中韓11大学の学長による共通メッセージ「藝術宣言」を表したことを契機に、新たな交流を築くとともに、東アジアから世界へ向けて芸術文化を発信するという新たな試みをスタートしました。2009年12月には日中の芸術系大学が北京に集まり「日中芸術教育シンポジウム」を開催するなど、東アジアとの芸術交流は確実に広がりつつあります。

 また、国内では、2010年12月に開催した文化庁長官と芸術系大学学長によるシンポジウムにおいて、文化庁と芸術系大学との連携や芸術系大学相互の連携の一層の強化などをうたった「政策提言」を発表し、近藤誠一文化庁長官へ手交しました。

 今後はこうした国内外の芸術教育の研究機関や、さらに他分野との交流によって伝統文化の継承と新しい芸術表現の創造を推進していきたいと考えています。


「協」

 学内においては、今年度の入学式は取りやめとなりましたが、私は1053名の新入生に向けて、「学長からのメッセージ」動画配信という形で、中国の古代文字で「協(きょう)」という文字を揮毫し贈りました。
 「協」は、土を耕す「鋤」の形が三つ重なっている。荒れた荒野を豊かな土壌にする「鋤」が「十」でさらに重なっていく、協力をする、というような文字です。

 この一つの「力」は、学生の皆さんが多くの人に支えられて芸大に入るまでの力。また一つは芸大で学んで、身につけていただく「力」。そして二つの土台が固まったときに、卒業し社会に旅立って、文化芸術で「力」をつけてもらいたい。三つの力を重ね、より多くの力を発揮し、社会に豊かな潤いをもたらす存在になってもらいたい。そんな意味を込めました。

 学生の皆さんには、実り豊かな学生生活を送っていただき、それぞれの歩む道に自身の未来を創造する「力」を期待しています。

 東京藝術大学は、これからも芸術系大学及び社会との連携・協力を通して、また、東アジアの国々と国を超えて協力し、次世代の優れた藝術家を育成し、世界の藝術の発展に貢献していくよう、今後ますます邁進し続けて参ります。

         平成23年4月
                                   東京藝術大学学長



宮田 亮平(みやた りょうへい):

金工作家
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻(鍛金)修了

イルカをモチーフとした「シュプリンゲン」シリーズなどの作品で、「宮田亮平金工展」(個展)をはじめとして、国内外で多数の展覧会に参加。「日本現代工芸美術展」大賞・文部大臣賞・内閣総理大臣賞や、「日展」内閣総理大臣賞、など数々の賞を受賞。

美術学部長を経て、平成16年4月から理事及び副学長。平成17年12月から現職。

>> 宮田亮平

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