舌出三番叟[しただしさんばそう]

歌詞[かし]

    [二上[にあが]]おおさえおさえ 喜[よろこ]びありや 喜[よろこ]びありや 我[わ]が此所[このところ]より 外[ほか]へは遣[や]らじとぞ思[おも][う]
    [に]せ紫[むらさき]も中々[なかなか]に 及[およ]ばぬ筆[ふで]に写[うつ]し絵[え]も いけぬ汀[みぎわ]の石亀[いしがめ]や ほんに鵜[う]の真似[まね][からす][と]
    (合方[あいかた]
    とっぱ偏[ひとえ][え]に有難[ありがた]き 花[はな]のお江戸[えど]の御贔屓[ごひいき]を 頭[かしら]に重[おも]き 立烏帽子[たてえぼし]
    さっぱも己[おの]が古郷[こきょう]へは 錦[にしき]と着[き]なすお取[と]り立[た]て 烏滸[おこ]がましくも五年[いつとせ]
    (合方[あいかた]
    今日[きょう]ぞ祝[いわ][い]にさむら[ろ][う]よ (合[あい]

    [あま]の岩戸[いわと]のな 神楽月[かぐらづき]とて 祝[いお][う]ほんその年[とし]も 五[いつ]つや七[なな][みっ]つ見[み][しょ]うと
    [ぬ][い]の模様[もよう]の糸様々[いとさまざま]に 竹[たけ]に八千代[やちよ]の寿[ことぶき]こめて

    [まつ]の齢[よわい]の幾万代[いくよろずよ]も 変[かわ]らぬためし鶴[つる]と亀[かめ]
    ぴんとはねたる目出鯛[めでたい]に 海老[えび]も曲[ま]がりし腰[こし]のしめ 宝尽[たからづく]くしや宝船[たからぶね]
    やらやら目度[めでた]いな 四海[しかい]波風[なみかぜ][おさ]まりて
    常磐[ときわ]の枝[えだ]ものホんえ 木[こ]の葉[は]も茂[しげ]る えいさらさ

    [こい]の瀧[たき][のぼ]り 牡丹[ぼたん]に唐[から]獅子[しし]から松[まつ]を 見事[みごと]に見事[みごと]に さっても見事[みごと]に手[て]を尽[つ]くし
    仕立[した]て栄[さか]えあるよい子[こ]の小袖[こそで] 着[き]せて着[き]つれて参[まい]ろかの 肩車[かたぐるま]にぶん乗[の]せて 乗[の]せて参[まい]ろの氏神[うじがみ][もう]
    [きね]が鼓[つづみ]のでんつくでん 笛[ふえ]のひしぎの音[ね]も冴[さ]えたりな 冴[さ]えた目元[めもと]のしほ[お]らしき
    [なか]の中[なか]の中娘[なかむすめ]を ひたつ長者[ちょうじゃ]が嫁[よめ]にほしいと望[のぞ]まれて (合[あい]

    藤内次郎[とうないじろう]が 橡栗毛[とちくりげ]に乗[の]って エイエイエイ
    えっちらおっちら わせられたので 其意[そのい]に任[まか]せ申[もう]した
    さて婚礼[こんれい]の吉日[きちじつ]は 縁[えん]をさだんの日[ひ]を選[えら]み (合[あい]
    [おく]る荷物[にもつ]は何々[なになに]やろな 瑠璃[るり]の手筥[てばこ]に珊瑚[さんご]の櫛笥[くしげ]
    [たま]を展[の]べたる長持[ながもち]に 数[かず]も丁度[ちょうど]のいさぎよく (合方[あいかた]

    [三下[さんさが]]花[はな]が咲[さ]き候[そうろう]黄金[こがね]の花[はな]が てんこちない 今[いま]を盛[さかり]りと咲[さ]き匂[にお][う]ても 偖[さて]も見事[みごと]な黄金花[こがねばな]
    [ほ]しかおましょぞ一[ひ]と枝[えだ][お]りて そりゃ誰[だれ]
    いとし女郎衆[じょろうしゅう]のかざしの花[はな]に ホオヤレ 恋[こい]の世[よ]の中[なか] 実恋[じつのこい]の世[よ]の中[なか]
    おもしろや 直[す]ぐにもあがり御目見得[おめみえ]を 叉[また]こそ願[ねご][う]種蒔[たねま]きや

    (鈴[すず]の合方[あいかた]
    千秋[せんしゅう]万歳[ばんぜい]万々歳[ばんばんぜい]の末[すえ]までも 賑[にぎ][わ][う]御代[みよ]とぞ舞[ま][い][おさ]

    *長唄[ながうた]のことばは昔[むかし]のかなづかいで書[か]くんだ。ひらがなに[ふりがな]をつけた所[ところ]だよ。