音楽とは何か? この永遠の問いに、研究を通じて学問的に答えようと試みるのが「音楽学」です。もちろんここでいう「音楽」には、いわゆる「クラシック音楽」だけでなく、古代から現代に至る世界中のあらゆる種類の音楽が含まれます。そのアプローチの視点や方法も実にさまざまです。音楽の構造や理論について論じたり、音楽をめぐる哲学的思索を行ったり、音楽が人々の生活や社会・環境・世界観などとどう関わり合っているかを探ったり、楽譜や文献その他の資料を調べてその歴史を跡づけたり……等々、音楽学の世界は無限の広がりを秘めています。
作曲や演奏など、音楽を実践的に学ぶ音楽専門大学の中に位置し、その恵まれた環境の中で研究活動を行っている楽理科では、「音楽の実践に根差した学問的研究」を目指しています。楽理科の学生は、さまざまな授業を通じて音楽学の基礎とその応用を学ぶだけでなく、作曲の基礎、演奏、音楽理論なども必修科目として受講します。また、音楽の理解には、それをとりまく各国の文化への理解が必要不可欠であるという考えから、外国語の修得も重要視しています。
→ 服部幸三先生「楽理科は何をするところか」(「楽々」特別寄稿)
| 1949年 | 楽理科設立。第1期生入学。 |
| 1954年 | 専攻科設置。 |
| 1955年 | 卒業論文発表会開始。 |
| 1956年 | 楽理科研究室3号館1階に移転。 |
| 1958年 | 入学定員25名から15名に変更。 |
| 1959年 | 専攻科の修業年限を1年から2年に延長。 |
| 1963年 | 大学院修士課程設置、講座制を施行。第1講座:音楽美学・音楽理論、第2講座:西洋音楽史、日本東洋音楽史。 |
| 1965年 | 楽理科研究旅行を開始。 |
| 1966年 | 楽理科研究室1号館4階に移転。 |
| 1969年 | 大学紛争。カリキュラム改定。 |
| 1971年 | 非常勤助手制度発足。 |
| 1974年 | 第3講座増設。第1講座:体系的音楽学、第2講座:西洋音楽史、第3講座:日本東洋音楽史。学部入学定員を15名から25名に変更。 |
| 1977年 | 大学院博士課程設置。 |
| 1980年 | 楽理科研究室5号館3階に移転。 |
| 1997年 | 学部カリキュラム改訂 |
| 2002年 | 音楽環境創造科設置に伴い、学部入学定員を25名から23名に変更。 |
| 2005年 | 論文発表会に博士論文発表を加える。 |
| 2006年 | 「大学院音楽研究科 音楽学専攻」(大講座)が「大学院音楽研究科 音楽文化学専攻」に改組。 |
| 楽理科、音楽環境創造科、大学院音楽文化学専攻で学科説明会を開始。 | |
| 2007年 | 藝大創立120周年記念行事としてレクチャー&シンポジウム開催。 |
| 2008年 | 学部カリキュラム改訂。5号館改修。 |
音楽教育、音楽ジャーナリズム、文化事業(音楽部門)の企画・運営から、放送・新聞・出版などマスコミ関係の仕事、音楽ソフトの制作と販売、そして一般企業への就職まで多岐にわたっています。作曲家、演奏家として活躍している人もいます。卒業後、さらに大学院(修士及び博士課程)で音楽学を専攻した人の多くは、各地の大学で音楽学の研究・教育活動に従事しています。
| 大学 | 330名 | (27.9%) |
| メディア(放送・新聞・出版・CD制作) | 67名 | (5.7%) |
| 演奏家、音楽教師 | 51名 | (4.3%) |
| 小中高校 | 41名 | (3.5%) |
| 研究機関 | 23名 | (2.0%) |
| 財団、行政機関 | 23名 | (2.0%) |
| 音楽マネージメント | 17名 | (1.4%) |
| 評論、ライター | 15名 | (1.3%) |
| 医師 | 6名 | (0.5%) |
| 楽器店 | 5名 | (0.4%) |
| その他 | 41名 | (3.5%) |
| (計) | 619名 | (52.5%) |
※2001年度までの全卒業生の進路内訳。%は総数(1,179名)を母数として計算。
楽理科生の卒業後の活動については、楽々内の「卒業生の声」もご覧ください。
楽理科は、音楽研究の学である音楽学を専攻する学科です。現在のカリキュラムでは、専門分野として
| 区分 | 科目分類 | 授業科目 | |
| 専 門 科 目 |
必 修 科 目 |
概説 | 西洋音楽史概説/日本音楽史概説/東洋音楽史概説/音楽美学概説/音楽理論概説/音楽民族学概説 |
| 実習 | 音楽学実習 | ||
| 卒業論文 | |||
| 楽書講読 | 楽書講読(英語) ※英語以外は選択科目 | ||
| 初級演習 | 初級演習A(日本音楽史)B(音楽美学)C(西洋音楽史)D(音楽民族学) | 講義 | 西洋音楽史I講義/西洋音楽史II講義/現代音楽講義/日本音楽史I講義/日本音楽史II講義/東洋音楽史講義/音楽民族学講義/音楽美学講義/音楽理論史講義/音楽音響学/音楽社会学/音楽分析論/記譜法/音楽学特論I/音楽学特論II/音楽学特論III |
| 演習 | 西洋音楽史I演習/西洋音楽史II演習/現代音楽演習/音楽理論史演習/日本音楽史I演習/日本音楽史II演習/東洋音楽史演習/音楽民族学演習 | ||
| ソルフェージュ | ソルフェージュI、II ※グレード別に受講 | ||
| 選 択 科 目 |
和声 | 和声I、II | |
| 専門基礎科目 |
声楽史/オペラ史/鍵盤音楽史/室内楽史/管弦楽史/楽器学/ジャズ・ポピュラー音楽/管弦楽法/対位法/管弦楽概論/楽式原論 作曲家作品研究A(声楽)B(鍵盤)C(管弦)D(室内楽) 邦楽概論A(雅楽)B(声明・琵琶楽)C(能楽)D(三曲)E(長唄・歌舞伎音楽)F(浄瑠璃) 楽曲分析1、2 |
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| 楽理科研究旅行 | |||
| 楽書講読 | ドイツ語・フランス語・イタリア語・ラテン語・日本語古文・中国語・ロシア語 | ||
| 副科実技 | 声楽または各種楽器 西洋古楽演奏I、II ガムラン演奏I、II 東洋音楽演奏I(シタール)、II(中国琵琶) |
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| 共 通 科 目 |
言語 (2ヶ国語) |
(1)ドイツ語・フランス語・イタリア語のいずれか (2)上記以外で、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロシア語・日本語古文・ラテン語・スペイン語のいずれか |
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| 教養科目 | |||
注意: 以上は概略です。履修登録を行う際は、必ず入学年度時の「履修便覧」を参照し、必要取得単位の確認を行ってください。授業科目によっては、毎年開講されないものもあります。また、教職科目は含まれていません。
東京芸術大学大学院音楽研究科は、修士と博士後期の二つの課程からなっています。博士後期課程に進学するためには、修士課程を修了する以外に、博士課程の入学試験を受験する必要があります。
また、大学院は講座制を採用しています。音楽学には、三つの講座があります。以下では、各講座の根幹をなす、常勤教員による各授業(ゼミ)を紹介します(非常勤講師による授業については、今年度の授業紹介をご覧ください)。
音楽学演習(植村幸生)
フィールド科学としての音楽研究という立場から、音楽文化の諸相を民族誌的に把握すること、およびそのための方法論について考察する。演習のテーマは毎年異なるが(05年度は「植民地下のレコード産業」)参加者は広義のフィールド経験に基づく洞察力が求められる。外国人留学生が多く参加していることも本ゼミの特徴の一つである。
→ 第2講座のページ
音楽学演習(土田英三郎)
西洋音楽史と音楽理論(史)を専門に研究するゼミです。音楽史研究に関わる根本的な問題を扱いますが、西洋古楽譜(自筆譜、写本、初期印刷譜など)・古文献を対象とする史料研究や、音楽作品の特徴を分析する様式研究、それに作曲家・作品研究、分析論、記譜法、演奏習慣、音楽用語研究、音楽社会史、音楽受容史、言説研究といった音楽学の伝統的・基礎的な領域ばかりではなく、音楽解釈学やテクスト論、ジェンダー論などの新しい方法や対象にも眼を配っています。やることは専門的でも、まず音楽がとても好きでなければなりません。その上で、音楽の仕組みや制度の内奥に迫りたい人、音楽を通して歴史や文化を見つめたい人、思考を深めたい人に向いています。活発なディスカッションが期待されています。
音楽学特殊研究(片山千佳子)
私が担当する音楽学特殊研究(西洋A)では、音楽理論の歴史に関係する問題を取り上げます。最近は、有名なラモーの理論の簡約版として18世紀に広く読まれたダランベール著『音楽の基礎』の原書を検討しました。
音楽学特殊研究(大角欣矢)
西洋音楽史のさまざまなテーマを取り上げています。重点はどちらかというと古い時代(ルネサンスからバロック)にありますが、それに限定しているわけではありません。これまでに取り上げたテーマは、「バロック・オペラにおけるアリアの形式とその背景」「パレストリーナの4世紀(パレストリーナ様式の諸側面と17〜19世紀におけるその受容)」「J.S.バッハ研究の動向(伝記・作品研究・受容)」「ポピュラー音楽へのアプローチと文化研究としての西洋音楽史」です。
音楽学演習(塚原康子)
日本音楽史ゼミでは、日本で行なわれてきた諸音楽に関する歴史的研究をしています。「日本音楽」という切り口からどのような研究が可能なのか、昨年度は「「日本音楽」の越境」を扱い、今年度は「「日本音楽」の戦後60年」をテーマに戦前と戦後との連続・非連続を考えることを通して探求しています。
音楽学特殊研究(植村幸生)
日本には戦前からアジア音楽研究の豊富な蓄積があり、戦後はフィールド研究が本格化した(本学はその最初の拠点である)。同分野はいまや従来の諸方法を統合し、かつ研究の前提を問い直す転機を迎えている。本科目では従来の研究成果に学びながらアジア音楽研究の将来を展望する。05年度は韓国・朝鮮音楽史を取り上げている。