音楽文化学とは

 東京藝術大学大学院音楽研究科「音楽文化学」専攻は、音楽学、音楽教育、ソルフェージュ、音楽文芸、音楽音響創造という研究分野から構成されています。音楽を中心とした多様な芸術活動を人間の重要かつ本質的な文化的営為としてとらえ、広い視野と多彩な研究方法によって探求するための研究組織です。

 環境問題、経済格差、ストレスと精神不安。社会に深刻な問題があふれている21世紀ですが、それだけになおさら芸術文化が人間にとってきわめて大切な営為であることが強く再認識されるようになっています。音楽文化・音楽芸術の研究も、かつてないほど広範な領域に拡がり、その意義や重要性も大きくなってきています。「音楽文化学」専攻は、音や音楽を中心に、音や音楽の関連領域にまで視野を拡げながら、人間にとって本質的といえる「芸術活動」というものを考察することを目的としています。旧来の伝統的研究手法と新しい今日的な研究手法を、あたかも車の両輪のごとく機能させ、新たな知的冒険へと乗り出していくのが、この専攻の姿なのです。
 教員スタッフには、常勤教員に加えて、様々な領域で活躍する多数の専門家を非常勤教員として迎えています。伝統的な音楽学から、最先端の音響技術や録音技術の研究、あるいは、アートマネジメントや文化政策といった文化芸術環境の研究まで、多様な分野をカバーし、きわめて充実した研究が行える国内屈指の教育研究拠点となっています。もちろん音楽理論や音楽史の研究拠点として、また、日本の音楽教育の要として機能し続けていきます。
 若い研究者として大学院生を多数迎え入れながら、21世紀の音楽文化研究拠点として質・量ともに組織の充実が図られています。ここでは、音楽文化の知恵と知識の集積拠点として、また、明日の芸術立国を担う有為な人材育成の拠点として、そして、ますます拡大している社会のニーズに応えられる研究組織として、学生と教員の研究活動が活発に行われています。

 学部教育との関係 大学院音楽研究科「音楽文化学」専攻への進学が想定されるのは、音楽学部の「楽理科」と「音楽環境創造科」です。学生はそれぞれ「楽理科」から「音楽学」研究分野に、「音楽環境創造科」から「音楽音響創造」研究分野に進学し、学部での知識や専門性をさらに高めていくことが期待されています。とはいえ、これらの道は必ずしも固定されたものではなく、学生の興味や研究方法によっては、進路が交差していくことも十分に考えられます。
 一方、研究分野「音楽教育」「ソルフェージュ」「音楽文芸」は、直接対応する学部組織を持たず、大学院のみに開設された研究分野であり、学部のあらゆる専攻から学生を迎え入れています(もちろん、いずれの研究分野を選択しても学生は他の研究分野の講義やゼミナールに参加することが可能です)。
 また、これらすべての研究分野で他大学からの学生を広く積極的に受け入れており、実際、社会学的アプローチや経済学的アプローチなどを採りながら音楽文化や音楽芸術を研究する学生が増えています。経済学、社会学、文学、心理学、工学といった領域からの音楽文化・音楽芸術へのアプローチも歓迎され、すでに他大学の法学部、経済学部、外国語学部などを卒業した多くの学生が本学の大学院に入学しています。

《参考》過去5年における修士課程入学者の出身大学(本学以外)
東京大学、京都大学、東京外国語大学、筑波大学、東京学芸大学、奈良女子大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京基督教大学、青山学院大学、フェリス女学院大学、桐朋学園大学 他

カリキュラムについて

 博士前期課程(修士課程)は、必修・選択授業あわせて30〜38単位を履修し、さらに修士論文を仕上げることが修了要件となります。

 常勤教員および非常勤教員によって開設される授業は、多様な領域をカバーしています。平成20年現在、その数は優に100を越えています。学生は主たる研究分野の授業に限らず、あらゆる授業を履修することができるので、例えば18世紀の音楽史を研究しながら、アートマネジメントの実際を学んだり、音楽教育の研究を深めるために、唱歌の歌詞を文芸的側面から分析することも可能です。また研究分野によっては修士論文の一部として、作品や演奏を含めることができます。

学位について

 博士前期課程(修士課程)では、全研究分野で「修士(音楽)」の修士号が授与されます。

 大学院音楽研究科「音楽文化学」専攻には、平成20年4月に博士後期課程が設置されました。博士後期課程の学生入学定員も10名増加され、25名となりました。博士後期課程では、研究内容により「音楽学」「学術」「音楽」のいずれかの博士号が授与されます。

博士前期課程 (修士課程) 博士後期課程 (博士課程)
修士 (音楽) 博士 (音楽学)
博士 (学術)
博士 (音楽)

キャンパスについて

千住キャンパス

 足立区の全面的な協力のもと、平成18年9月に千住キャンパスが誕生しました。

 学部「音楽環境創造科」および大学院「音楽文化学」専攻の研究分野(音楽教育、音楽音響創造)がこの千住キャンパスで研究活動を行っています。

 平成18年9月、足立区北千住に東京芸術大学千住キャンパスがオープンしました。これは、足立区と本学の協定に基づいて、録音スタジオ、音楽演習室、ホール、音楽療法室などを備える充実した研究施設として設立されたものです。「音楽文化学」専攻の学生は選択する研究分野によって、上野キャンパスもしくは千住キャンパスで研究活動を行うことになりますが、両キャンパスは30分程度で行き来できる環境にあるため、どちらのキャンパスで開講される講義やゼミにも出席することが可能です。みなさんの研究のオリジナリティーにあわせて、両キャンパスを縦横無尽に活用してください。



Last modified: 2010-08-10 14:59:24