応用音楽学

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 応用音楽学では、音楽の知識や技術を、個性化・高度化を目指す社会の中で活用し、文化の創造と発展のためにいかに応用し役立てていくかを考え実践する「生きた学」を標榜しています。具体的には、音楽文化施設や音楽芸術団体の企画・運営(アートマネジメント)を行う人材、政府・自治体及びその関係機関で、音楽文化の振興・普及や伝統的な音楽・芸能の保存・継承に携わる人材、各種の療育施設等で音楽療法の仕事を担う人材、その他幅広く音楽文化の振興と普及の仕事に従事する人材の養成を図ることをねらいとしています。また、博士後期課程では、大学や研究機関でこれらの各分野の教育研究に従事する研究者の育成を行っています。

望まれる学生像

 専門家であると同時に、複数のフィールドを横断的・有機的に考え、結びつけることのできる柔軟さをもった学生が望まれます。さらに、常日頃から感性や知性を磨き、論理的に言語化する能力が必要とされます。したがって、ある程度以上の語学能力、専門関連領域についての必要最低限の知識が必要なのは言うまでもありません。そして何よりも、自分の考えや理想を明確に伝えるコミュニケーション能力が重視されます。自己の内部で自足しただけの知識では意味がありません。

修了後の進路

 これまでのところ、おおむね修了後の進路は安定しています。大学教員・助手として教育機関に勤める者、あるいは、養護学校や医療福祉機関の職員として働く者がおり、また、一方で神奈川新聞社、NHK、東北新社、ヤマハといった企業や、サントリーホール、アフィニス文化財団、アリオン音楽財団、企業メセナ協議会、国際交流基金などの芸術関連組織に就職した者などがおり、それぞれ第一線で活躍しはじめています。もちろん、博士後期課程に進学し、研究の道を志す学生もいます。

Q&A

Q. 日本の伝統楽器を研究テーマにすることはできますか?

A. 楽器そのものの研究であれば、音楽学の領域にあたります。しかし、伝統楽器を中心に、その楽器を用いた芸能の保護や振興といったテーマであれば、十分に研究対象となりますし、これまでにも同様のテーマで研究にとりくんだ学生がおります。

Q. 芸術活動を心理学的な観点から研究することはできますか?

A. 純粋な心理学として取り組むことはできませんが、心理的ファクターを重視したマーケティングや事業評価などであれば、興味深い研究が可能であろうと考えます。

Q. 音楽療法で特に中心としている領域はありますか?

A. 何か特定の領域を中心としているわけではありませんが、強いていえば児童領域、とりわけ自閉症児について力点がおかれています。しかし、高齢者領域を研究対象にしている学生もおり、領域に制約があるわけではありません。

Q. 音楽療法において、とりわけ脳科学に興味をもっていますが、このような観点からの研究はできますか?

A. 脳にかぎらず生理学的観点からの研究に興味があるとすれば、この研究室はお勧めできません。このような研究の重要性には疑問の余地がありませんが、当研究室では、あくまでも音楽を中心とした質的研究を重視しており、生理学的なアプローチには強くありません。

Q. 能や歌舞伎など日本の無形文化財を研究対象とすることはできますか?

A. もちろんできます。これまでにも同様のテーマで研究にとりくんだ学生がおりますし、日本に限らずアジアの無形文化財を研究対象とした留学生もおります。

Q. 芸術環境創造分野と何が異なっているのですか?

A. 応用音楽学では、芸術環境創造分野では扱っていない音楽療法を大きな柱のひとつとしている他、オーケストラやオペラなどのクラシック音楽や日本や世界の伝統芸能を関心の中心においていることをあげることができます。これは修了生の研究テーマや進路などにも反映されていますので、あわせて参考にしてください。いずれにせよ、いずれも音楽文化学専攻に属する研究領域ですので、入学後は領域をまたいだ履修や研究が可能です。

Q. 博士から入学したいと考えていますが、可能でしょうか?

A. 他大学の修士課程を終えた後、あるいは、藝大の他分野の修士課程を終えた後に、応用音楽学の博士課程に入学した学生はこれまでにも幾人もいます。妥当なテーマ設定、博士論文を仕上げるための適切な準備、当研究室を志望する必然性など、諸条件が整っていれば受け入れることは可能です。

Q. 能楽など古典芸能や伝統芸能を研究対象とすることはできますか?

A. もちろんできます。これまでにも伝統芸能の振興といったテーマで研究にとりくんだ学生がおります。

Q. 入学後に実技の指導は受けられますか?

A. 受けられません。いわゆる実技レッスンはありません(音楽教育およびソルフェージュを参照ください)。

Q. 語学や音楽史の試験では、最低でも何点くらいとらなければなりませんか?

A. お答えできません。音楽研究科で研究するに値する最低限の知識を準備しておいてください。

Q. 音楽教育か音楽療法かで迷っています。

A. ご自分の研究計画および将来の方向性を十分に検討して判断してください。どちらに行くべきかという判断はいたしかねます。

Q. 音楽療法の授業は、音楽療法士の認定資格とどのような関係がありますか?

A. 応用音楽学のカリキュラムは、音楽療法士養成のために作られているものではないので、直接的な関係はありません。

Q. 音楽療法の実習はできますか?

A. 学生のレベルと研究内容によっては、セッションの見学などから開始し、アシスタントでのセッション参加等、実践をおこなうことも可能です。

Q. 学外の音楽療法士とともに学内でセッションをすることはできますか?

A. できません。

Q. ベンヤミンなどに興味があります。哲学的な考察を行うことも可能ですか?

A. 研究計画に具体性があれば不可能ではありません。文芸的要素が強いのであれば音楽文芸を、音楽美学の要素が強いのであれば音楽学を、また、メディア論・社会学に力点があるなら芸術環境創造を検討することもお考えになってみてはいかがでしょうか。

Q. 芸術環境創造との違いは何ですか?

A. 明確な違いを定義するのは難しいですが、応用音楽学では伝統的な芸術(オペラ、オーケストラ、古典芸能、伝統芸能、など)を研究対象とし、アカデミックな手法から考察するのに対して、芸術環境創造では「今これからの芸術創造」という観点を重視して研究を行っていると言えるでしょう(芸術環境創造を参照ください)。

Q. 他大学出身者にはハンディがありますか?

A. ありません。実際に他大学出身者のほうが数の上でも多くなっています。

Q. その場合でも、音楽大学出身者のほうが有利ですか?

A. いいえ、音楽を専門に学んでいない一般大学出身者も多数入学しています。

Q. スペイン語の過去問題を見たいのですが?

A. ここ数年はスペイン語での受験者がいないため、現在公開している過去問題にはスペイン語の問題はありません。レベルについては他の外国語(フランス語やイタリア語、など)を参考にしてください。

Q. 受験する外国語による有利・不利はありませんか?

A. 選択した外国語によって不公平が生じないよう最大限の配慮をしています。

Q. 芸術環境創造との違いは何ですが?

A. 厳密な違いをいうのは難しいですが、教員の専門や方向性が異なっています。教員のプロフィールやこれまでの修士論文を確認して判断してください。

Q. 音楽療法の実践経験はありませんが、研究はできますか?

A. 音楽療法をどのような視点から研究して、何を明らかにしたいかによります。もとより音楽療法士の資格をとることを目的にしてはいませんから、音楽文化の研究の一環ということであれば、実践経験がなくとも、研究を行うことは可能です。

Q. 修了要件単位はどうなっていますか?

A. 修了要件単位は38単位です。必修として応用音楽学演習(4単位)および応用音楽学実習(3単位)を2年間にわたって履修してもらいます。加えて2年間であと24単位以上を取得しなければなりません。

Q. 入試の小論文というのは何を問うものですか?

A. 専門的な知識を問うためのものではなく、一般的な論理考察能力を問うためのものです。過去問題を参考にしてください。

Q. 最初に決めたテーマ(入試の時のテーマ)と実際の修士論文のテーマは必ず同じでなければなりませんか?

A. 理想的にはそうなりますが、現実としては、多少なりとも変化することのほうが多いようです。教員の指導やアドバイスを受けながら修正していくことで、自ずと変わってくるものです。ただ、研究テーマや研究計画を評価して合否を決めるわけですから、まったく異なったテーマで研究を開始することは原則としてありえません。

Q. 学生の研究や要望にあわせて非常勤の先生を招聘していただくことはできますか?

A. 原理的には可能です。実際に、学生の希望を考慮しつつ非常勤の先生を依頼してきたというのがこれまでの経緯です。



Last modified: 2010-08-11 16:18:43