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「大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト」の開始について

2016年12月09日 | プレスリリース, 全て, 大学全般

 このたび、東京藝術大学は、一般財団法人日本国際協力センター(JICE)とジョイントベンチャー(共同企業体)を結成し、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト(The Grand Egyptian Museum Joint Conservation Project, GEM-JC)」の業務実施契約を締結いたしました。

 本プロジェクトは、東京藝術大学美術学部内に設立された国際文化財修復プロジェクト室初めての国際協力プロジェクトであり、ツタンカーメン王の墓から出土した遺物を含むエジプトの至宝の調査、移送、保存修復を日本人専門家と日本政府が開館支援を行っている大エジプト博物館(GEM)とが共同で行い、GEM職員の人材育成および技術移転を図るものです。

 GEMには約10万点におよぶ文化財遺物が収蔵され、うち約5万点が展示される計画で、その中にはツタンカーメンの至宝が含まれます。GEMにはこれらの遺物を保存修復する役割を担う保存修復センター(The Grand Egyptian Museum Conservation Center, GEM-CC)がありますが、脆弱な遺物を含む膨大な数の遺物を3年間という限られたプロジェクト期間で行うためには、対象遺物を選定する必要があります。そこでGEMと協議の上、GEMの開館にとって重要かつ技術移転に適した分野に絞り、①木製品、②染織品、③壁画および石材の3分野から72点を選定し、それらの対象遺物を「リード遺物」と「フォロー遺物」とに分類しました。リード遺物にて主たる技術移転を行い、GEM職員が習得した知識・技術を用いてフォロー遺物の保存修復を展開していく計画です。

 リード遺物となるのは、新王国時代ツタンカーメン王の墓から発見された遺物(紀元前1300年代)および古王国時代の泥煉瓦造りのマスタバ墓から発見されたイニ・スネフェル・イシェテフの壁画です(下表参照)。

分類 定義 対象遺物

リード遺物
(10点)

日本人専門家とGEM職員とが共同で一連のプロジェクト活動を行う。 【木製品】
ツタンカーメン王の儀式用の戦車1点、儀式用大型ベッド1点
【染織品】
ツタンカーメン王のチュニック1点、手袋1組、靴下1足、布2点、刺繍1点、ツタンカーメン王の厨子にかかっていた布1点
【壁画および石材】
イニ・スネフェル・イシェテフの壁画の一部(壁画片1セット)

フォロー遺物
(62点)

GEM職員が主体となって保存修復を行い、日本人専門家は適宜助言を行う。 【木製品】
ツタンカーメン王の戦車4点、儀式用大型ベッド2点
【染織品】
ツタンカーメン王の染織品50点
【壁画および石材】
イニ・スネフェル・イシェテフの壁画の一部(壁画片5セット)とスネフェル王の河岸神殿から発掘された石造レリーフ1セット(移送のみ)

 本プロジェクトを通じて、GEM-CCが保存修復活動における高い技術、技能、経験を修得し、中東・アラブ諸国における文化財保存修復・研究の中心的な機関となっていくことを目指します。