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サポート活動

Ⅱ.成果発信

2.博士学位データベースの構築とアーカイブ・プロジェクト

向井 大策

ひとつの形態として、そして博士学位授与に関わる記録の公開性に資するものとして、一定の役割を担ったと考えられる。今後は博士データベース等を通じて、こうした成果発信、記録公開が担保されていくことになるであろう。また、演奏会の録音・録画の事後処理に関しては、総合芸術アーカイブセンターへの移管が進みつつあるが、事前処理についてもいずれかのあり方での継続が必要とされる。

§1.博士学位データベースの概要

音楽研究科リサーチセンターでは、美術研究科・映像研究科リサーチセンターと共同で、「博士学位データベース」の構築を行った。これは本学の博士学位取得状況に関するデータをまとめたもので、論文要旨や審査概要などの外部公開を目的としている。

データは博士学位取得者ごとに作成され、内容は大きく、①取得者に関する情報、②博士学位論文の要旨と審査対象作品・演奏の内容、③学位審査の要旨からなる。データベースには昭和57年度から平成22年度までの博士学位取得者195名分の博士学位論文の要旨と審査対象作品・演奏の内容、および学位審査の結果とその要旨が遡及入力され、データベースに登録された。

データ入力の作業にあたっては、学報に掲載された学位審査概要の内容をデータベースの該当項目に入力している。平成13年度以降の学報についてはワード文書、PDF文書などのかたちで電子データが入手できたため、入力作業は比較的容易であった。しかし、それ以前の学報に関しては、電子データはないため、紙の学報をスキャナでコンピューターに読み込んで電子化し、OCRを使ってテクスト化した後に、データベースに入力していくという作業方法をとらざるを得なかった。テクスト化に際しては、文字化け等も多く、その入力に思いのほか時間を割かなければならなかった。

§2.博士学位審査演奏会のウェブ配信

今後、博士学位データベースは、図書館と総合芸術アーカイブセンターに移管される予定である。それとともに、総合芸術アーカイブセンターでは、博士学位審査演奏会のウェブ配信(「アーカイブ・プロジェクト」)も行われることとなった。

リサーチセンター全体の事業において、博士研究成果の社会発信は当初の重要な目的のひとつであった。そのため、当初計画においては、博士学位審査対象作品・演奏の公開に関するホームページを試験的に構築することが掲げられていた。音楽研究科リサーチセンターでは、平成20年度より、博士学位審査演奏会の録画映像を記録してきたが、今後、博士学位データベースと録画映像を 総合芸術アーカイブセンターに移管することで、これまで記録されてきた平成20~22年度の学位審査演奏会(学外へは抜粋部分の配信)を含めて、平成23年度以降は全公演が学外へ配信される予定である。また、学位審査演奏会以外にも、D コンサートや公開講座の記録映像についても、同様に配信の予定である。

配信は、総合芸術アーカイブセンターのウェブサイトから行う。配信方法は、映像配信と音源配信の両方を行い、どちらもStream形式でダウンロード不可能なかたちで行われる。サイト上には、演奏者名(助演者をふくむ)、演奏会のプログラム、論文タイトルと要旨が掲載される。

博士学位審査のプロセスやその成果を社会に公開していくことは、大学院博士課程の重要な責務のひとつといえる。博士研究成果の公開については、文部科学省の学位規程において、「博士の学位を授与された者は、当該学位を授与された日から1年以内に、その論文を印刷公表するものとする」(第9条)と定められているが、芸術実践領域においては、作品や演奏といった実践面での成果も、研究論文における学術的成果と同様に、博士研究の重要な要素である。したがって、学位審査演奏会の映像記録を学外へウェブ配信し、公開することは、社会への博士研究成果の発信として重要な意味をもつものだろう。

今後、博士学位データベースとこのアーカイブ・プロジェクトが、学生や教職員だけでなく、社会の人々に広くかつ持続的に活用されていくように期待する。

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