論理マーカー(logical markers)
まとまった談話間の意味論的・構造的な関係を表現し、読者が語用論的なつながりを解釈するのに役立つ。
- 付加
- 〔例〕"そして" "その上" "加えて" "さらに" など
- 逆接
- 〔例〕"あるいは" "しかし" "だが" など
- 結果
- 〔例〕"なので" "だから" "その結果" など
- 結語
- 〔例〕"結局のところ" "ともかく" など
順序表示子(sequencers)
一連の話の流れの中で個々の文や談話がどのように位置づけられているかを示し、特定の順序で並べられたいろいろな議論を読者が読むときの案内になる。
〔例〕"まず" "次に" "一方で…他方で…" など
リマインダ(reminders)
テクストの先行箇所を指示しなおし、先行の議論を再び取り上げたり、ふくらませたり、要約したりする。
〔例〕"…に戻ろう" "先に述べたように" など
トピック表示子(topicalisers)
話題の推移を読者に明示することで、読者が議論についていきやすくする。
〔例〕"政治的に言えば" "NHSの場合は" など
コード注釈(code glosses)
テクストの内容を説明したり、言い換えたり、補足したり、例示したりする。概して、議論についていくための読者の知識や能力に対する著者の期待を反映している。
- 挿入語句
- 〔例〕"…当時(いまの保守党と同様に)" など
- 句読法
- 〔例〕"脱税: 他人は困るが本人はそうでもない" など
- 言い換え表示子
- 〔例〕"言い換えると" "すなわち" "簡単に言えば" など
- 例示子
- 〔例〕"たとえば" "例を挙げると" など
発語内行為マーカー(illocutionary markers)
(テクストではなく)著者がおこなっている行為を明示的に名指す。
〔例〕"私は…を提案する" "…を説得したいと思っている" "この考えを裏付ける" など
アナウンス(announcements)
テクストのこの先の箇所を示すことで、読者があらかじめ先の議論を見越せるようにする。
〔例〕"多くの大義名分がある" "あとで見るように" など
ぼかし(hedges)
テクストの真理値について、部分的にコミットしていることを表す。
- 認識的〔陳述緩和的〕助動詞
- 〔例〕"だろう" "かもしれない" "にちがいない" など
- 見込みの副詞
- 〔例〕"おそらく" "たぶん" "もしかすると" など
- 認識の表現
- 〔例〕"…でありそうだ" "…ということはありうる" など
確信マーカー(certainty markers)
テクストの真理値について、全面的にコミットしていることを表す。
〔例〕"疑いなく" "明らかに" "たしかに" "もちろん" など
帰属先表示子(attributors)
情報のソースを明示し、また同時にソースの権威によって説得力を付加する。
〔例〕"xは…と主張している" "首相が述べたように" など
態度マーカー(attitude markers)
読者やテクストの内容についての著者の気持ちを表現する。
- 義務的助動詞
- 〔例〕"…なければならない" "…べきである" "…必要がある" など
- 態度的副詞
- 〔例〕"ざんねんながら" "意外にも" "驚くことに" など
- 態度的形容詞
- 〔例〕"…とは不条理だ" "…とは珍しい" "…は困難である" など
- 認知的動詞
- 〔例〕"…と感じる" "…と考えている" "…と思う" など
コメンタリー(commentaries)
テクストを通して、著者と読者の関係をうまい具合に成立させるのに役立つ。
- 修辞疑問
- 〔例〕"ヨーロッパの未来はどうなるか、統合だろうか、分裂だろうか" "これは正しい態度なのか" など
- 読者への直接的な呼びかけ
- 〔例〕"親愛なる読者のみなさん、理解しなければなりません" など
- 包括化表現
- 〔例〕"われわれはみな…と信じる" など
- 個人化
- 〔例〕"世論調査が私に伝えていること" "私は…を望まない" など
- 余談
- 〔例〕"ダイアナは――スペンサー家の人間にしては珍しく――英国教徒ではなかった" など