池田[いけだ]の猪買[ししか]

台本[だいほん]

      説明[せつめい]池田[いけだ]も山[やま]の手[て]へかかって参[まい]りますと、なんせ寒気[かんき]の厳[きび]しい折[おり]から、綿[わた]をちぎって投[な]げるような雪[ゆき]がチラチラ。

      喜六[きろく]「おお寒[さむ]。ああ寒[さむ]。あー、寒[さむ]いなー
      こないに寒[さむ]うなるんやったら、もっとぎょうさん着[き]てきたら良[よ]かった。
      あー、寒[さむ]い寒[さむ]い寒[さむ]い…
      [さむ]いはずやがな、これ。チラーチラ雪[ゆき]が降[ふ]っとんのやな、これ。
      さあ、急[いそ]ご、急[いそ]ごう。
      そやそや、この辺[へん]ちょっと道[みち][き]こうかいな。
      あんなとこにお百姓[ひゃくしょう]さんがいてはるわ。
      ちょっと、あのお百姓[ひゃくしょう]さんに道[みち][き]こうかな。
      あの、すんません、お百姓[ひゃくしょう]さん、道[みち][き]きたいんですがな、お百姓[ひゃくしょう]さん…もし、お百姓[ひゃくしょう]さん…
      おい、百姓[ひゃくしょう]。百[ひゃく]。五十[ごじゅう]と五十[ごじゅう]。四十[よんじゅう]と六十[ろくじゅう]
      [ひと]が道[みち][き]いてるのに、答[こた]えたらええやない…
      ああ、よう見[み]たら、かかしやがな…」