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資料紹介(図書)
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Der Singemeister Carl Friedrich Zelter / herausgegeben von Christian Filips. Mainz: Schott Music, c2009. [C120/Z53/3]

 カール・フリードリヒ・ツェルター(1758~1832)はベルリン・ジングアカデミーやリーダーターフェルの指揮者として活躍し、自らも多数の合唱曲を作曲するなど、18世紀後期 以降のベルリンおよびドイツの音楽活動に絶大な影響を及ぼした人物である。特に、彼がジングアカデミーでバッハを積極的に取り上げたことは、その音楽に刺激された弟子のメンデルスゾーンによる《マタイ受難曲》蘇演、ひいては19世紀におけるバッハ復興を促したという意味でも、きわめて注目に値する。また、ツェルターは歌曲作曲家としても知られ、ゲーテとの深い親交および文通がきっかけとなって生まれたそれらの作品は、ベルリン歌曲楽派の形成において重要な役割を果たした。
 本著作はドイツを中心に活動する16人の著者による共著の形をとっており、様々な角度から、ツェルターの音楽家としての並外れた人物像と、当時の生き生きとした音楽文化へと光を当てる。カラー図版が多数挿入され、また付録には1791年の創設時から今日に至るまでのベルリン・ジングアカデミーの年表がある。

(大島)

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