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資料紹介(DVD)

10.

『藝大21 和楽の美 邦楽で綴る『平家の物語』前編』 東京藝術大学出版会、TUAD-1004、2009年、請求記号:[DVD 109]

『藝大21 和楽の美 邦楽で綴る『平家の物語』後編』 東京藝術大学出版会、TUAD-1006、2010年、請求記号:[DVD 110]


   本DVDは「藝大21 和楽の美」プロジェクトの第7作である。邦楽科を中心に行われているこのシリーズでは、毎回現代の邦楽の可能性を追求する画期的なプログラムが組まれている。今回は「平家物語」を題材に、前後編の企画となっている。平家物語は邦楽の様々なジャンルに影響を与えた作品であり、それらの関連曲目を演奏するのみかと思いきや、西洋音楽とのコラボレーションやコンピューター・グラフィックを使用した舞台美術など、見るもの聴くもの非常に盛りだくさんの内容である。よって本編も少々長い。(前編:200分、後編:142分)しかしそれをあまり感じさせない舞台であり、邦楽の魅力に取りつかれること間違いなしのDVDである。
   前編は平清盛の入寂までを取り上げる。平家と言えばやはり琵琶だが、その琵琶による語りで始まり、締めくくる構成である。終盤の、邦楽囃子・義太夫による「奈良炎上」、バリトンやティンパニも入った箏曲「祈り」は、舞台美術と演奏が見事に調和し、非常に迫力ある作品となっており、圧巻である。
   後編は平家滅亡までを扱う。冒頭の、オルガンを使用した雅楽「皇麞急」は、まるで嵐の前の静けさとでも言うような、平家のこれからを予感させる演奏となっている。山田流箏曲「海の底の都 その二 シャングリラ」では、安徳天皇が入水して、海の底の都で過ごす様子が描かれている。母を恋しく思う安徳天皇の寂しさを、歌詞だけでなく人形によっても表現しており、非常に共感を呼ぶ演出となっている。
   舞台背景のコンピューター・グラフィックは曲目に合わせて変化していく。舞台の大道具が映像に変わるだけで、こんなにも印象が違うものかと驚くばかりである。曲中でも歌詞に合わせて少しずつ変わっていくので、見ていて飽きることがない。少しぼ~っとしていたら見逃してしまうかもしれないので、ご注意を。
 (井土)





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