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Ⅰ.Dコンサート1~3 ―開催報告とアンケート結果

森田 都紀

3.第3回Dコンサート:「交錯するアイデンティティと音楽する意志」

第3回Dコンサートポスター:表  第3回Dコンサートポスター:裏

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第3回は2012年11月16日(金)19:00~21:30にカワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」にて開催された。会場の130席が満席になる大盛況の中、3名の博士号取得者が、実演を交えながら博士課程での研究を発表し、続いて異色のコラボレーション(ピアノ、声楽、三味線)も3曲披露した。

◎研究成果発表と演奏
  1. 菅野雅紀(ピアノ)
    武満徹《ロマンス》、三善晃《子守歌》、間宮芳生《3つのプレリュード》より〈夕日のなかの子供達〉
    「演奏解釈における『想像力』と『歪形』:武満徹の思索をもとに」
    ピアノ:菅野雅紀
  2. 飯島香織(声楽)
    三木稔オペラ《春琴抄》より〈こいしきひとは罪深く思わぬ〉、〈新肌に結い髪の乱れ〉
    「オペラの日本語歌唱とその表現方法」
    ソプラノ:飯島香織 ピアノ:菅野雅紀
    新箏(21絃)・三味線:安嶋三保子 尺八:友常聖武
  3. 角田剛士[新内剛士](三味線音楽)
    五代目富士松加賀太夫《梅雨衣酔月情話》より
    「上調子の変遷を通してみる三味線音楽の美」
     三味線:角田剛士 三味線(上調子):新内仲之介
◎出演者によるクロス・トーク (司会:中村美亜)
◎オリジナル・コラボレーション
  • 丸山和範《秋刀魚の歌》 作詞:佐藤春夫
    ソプラノ:飯島香織 ピアノ:菅野雅紀 三味線:角田剛士 尺八:友常聖武
  • 佐藤岳晶《萃点Ⅰ──回生の山姥》【新作委嘱】 作詞:鶴見和子
    ソプラノ:飯島香織 ピアノ:菅野雅紀 三味線:角田剛士
  • 山田耕筰《赤とんぼ》作詞:三木露風 編曲:佐藤岳晶
    ソプラノ:飯島香織 ピアノ:菅野雅紀 三味線:角田剛士

オリジナル・コラボレーション

オリジナル・コラボレーション 佐藤岳晶《萃点Ⅰ──回生の山姥》

また演奏会終了後、約1/4の方々がアンケートに回答くださった。アンケートからは発表に対する高い関心と評価が窺え、Dコンサートの今後の存続を期待する声も数多く寄せられたが、その一方で、学外・有料といった開催方法について批判的な声も聞こえた。

◎アンケート結果
*Dコンサートの趣旨・企画に関して
  • 「研究の成果あるいは標本としての実演という形式がとてもよいです。むずかしいことはわかりませんが、双方(研究成果発表と実演)あってこそのコンサートですね。角田先生の発表を聞きにまいりましたが、西洋音楽の話も興味深く拝聴しました。」
  • 「初めてDコンサートを拝聴いたしました。演奏家の方々の研究の深さと共に、作曲家の心の深さも感じ入りました。次回も参加させていただきたいです。」
  • 「どの研究も着想が演奏家ならでは。演奏活動の中で生じた身近な疑問に端を発し、本格的な研究につなげている点がおもしろいと思いました。問題設定が明確なので、説明に説得力がありました。」
  • 「また次を楽しみにしています。尺八、箏もすばらしい。この会がさらに発展することを願っています。」
  • 「実演の質的レベルがすばらしいのはもちろんですが、その表現のうらに深き研究による成果があることを感じることができ、本当に興味深く聴くことができました。研究と演奏を合わせて聴く機会はなかなかないので、とても楽しめました。」
  • 「大変難しい内容でしたが、理解しやすく、日本のオペラにも興味が持てそうです。三味線音楽合奏の楽しみ(初めて上調子のことを知りました)をこんなに感じたのは初めてでした。レベルの高いおもしろいコンサートでした。
  • 「今日のお客様はどのような立場なのでしょうか。研究発表の講義なら良いかもしれませんが、素人対象としたら内容がこなれていません。難しいことは楽しく、楽しいことは深く(間違って書いたかもしれませんが井上ひさしにこんな言葉がありました)。」
*個々の発表・演奏内容に関して
  • 「子守歌の性格の違い(日本と西洋の)など、言われてみたら、目からウロコでした。ひとつのモチーフからこんなに拡がるのかということも興味深く聴かせてもらいました。」
  • 「いつも日本歌曲は日本人が歌っても、外国風?と思っていたので、2つの歌い方の違いを実演してくださり、これまた目からウロコでした。」
  • 「琴が上調子にとってかわられ、歌舞伎から消えたというお話も非常におもしろかったです。小ばち⇔琴もなるほどと思いました。長年歌舞伎に通っていますので、琴が無いなと思いながら理由がわかりませんでしたが、納得のいく説明でした。」
  • 「《梅雨衣酔月情話》すばらしかったです!!歌舞伎、いえ演舞場?に行きたくなりました。」
*コラボレーションに関して
  • 「口伝と五線譜、コラボ合奏に未来を見たように思う。こっけいでもあり、楽しかった。」
  • 「ピアノ、浄瑠璃とオペラのコラボは成立した。三味線も近代的に通用した。ますます研究、研鑽してください。」
  • 「熱意の感じられるコラボレーションでした。」
  • 「西洋音楽とのコラボレーションは無理だと思います。角田先生がお気の毒になりました。」
*若いアーティストへの期待
  • 「欧米のまねでなくオリジナリティを発揮できるように、今夜の三人がその先駆者になると思う。」
  • 「今日のような邦・洋のコラボ、又海外アーティストとのコラボにより、新しいものを生み出すことに期待します。」
  • 「グローバル化と高度情報化社会の到来で、世界は劇的に変わると思います。そのリーダー的発想を是非体系化して欲しいと思いました。」
  • 「アーティストは世の中に想像力、創造力を与える存在です。すぐには役に立たないように思われる文化・藝術が豊かに存在する社会こそ、21世紀は生き残り発展していくと信じています。」
  • 「今日は本当に有能で明るく力強いアーティストにふれ、希望がわきました。アートと社会の橋渡しをし、アーティストに活躍の場を広げる使命感を強く感じました。」
*今後のDコンサートに関して
  • 「①無料、②無料、③3000円!ギャップがありすぎる。第6ホールに戻りたい。」
  • 「町中のサロン的会場で開催していただくことにより、身近に音楽の深い楽しみを知ることが出来るのではないでしょうか。宣伝方法も大切だと思います。より多くの方々にこのような会に参加していただければ良いと思います。」