東京藝術大学ではその前身であった東京美術学校の創立以来、教育、研究を目的とした芸術資料の収集に努めてきました。
その内訳は、美術品に限らず、作家や作品にまつわる資料、制作、教育、美術史研究のための資料まで多岐にわたるものです。
これら資料に関する基本的な情報は、過去に刊行された収蔵品目録、年報などさまざまな方法で記述されてきました。
大学美術館では開設準備の頃より、これら資料情報のデータベース化を進めてきました。
データベースの開発にあたっては、美術館内外の研究者・教育者から一般の美術愛好家までが、
広くそれぞれの目的にあわせて活用できるような柔軟性が求められてきました。
そこでこのデータベースでは、これまでに記録されてきた情報をもう一度編集し直すのではなく、
それぞれを「関連付ける」という方法で組み立てています。
このような構造をもったデータベースで検索すると、あたかも点と点の間に線が引かれるように、
作品と作品、作品と作家といった個々の情報の関係が浮かび上がってきます。
そのことにより、くり返し語られてきた専門的な文脈にとらわれず、意外な図像の組み合わせに気づいたり、
人物や資料の繋がりなどを発見したりするきっかけをもつくりだします。
この展覧会では、このような芸術資料の連鎖に焦点をあてながら、高橋由一「鮭」、原田直次郎「靴屋の親爺」、
浅井忠「収穫」、上村松園「序の舞」、狩野芳崖「悲母観音」といった芸大コレクションを代表する名作とともに、
下図、写生、習作、また東京美術学校の教官や学外の作家が共同で制作した連作など、約70件を紹介していきます。
また、展示室にパソコンを設置し、収蔵品データベースから大学美術館所蔵品が検索できるほか、
本展覧会全出品作品を、高精細画像で作品の細部が閲覧できるようになっています。
|