乗り物が「移動する空間」であるならば、鞄は身体による「モチハコブカタチ」に他なりません。
仕事や旅行など、様々なシーンにおける「モチハコブカタチ」のあり方(機能性の追求)に鞄デザインの真価が問われます。
エースの歴史は業界初の素材であったナイロンとの出会い(1953年)を転機として飛躍的に拡大へと動いていきます。道具としての鞄づくりにこだわる創業者のデザイン哲学が、誰もが使える手軽なナイロンバックを誕生させました。その後、数々の製品が「モチハコブカタチ」として市場に浸透、日本最大手の鞄メーカーに成長するとともに、それらの製品は、常に戦後日本の生活に身近な存在として我々の暮らしを支えてきました。
このように今回開催するエースのデザイン展は、ファッション的な視座からの鞄デザインにスポットを当てたものではなく、あくまでインダストリアルデザインとしての鞄—生活道具としての鞄の存在を再評価することにあります。その進化の系譜を時代ごと(50年代以降~)の展示や、最新の鞄デザインをご覧いただくことで、日本人の「モチハコブカタチ」の歴史とこれからを感じ取っていただければ、と考えています。
|