音響心理研究法(通年・4単位)
丸井淳史
- 金曜日 2限目(10:40–12:10)
- 千住キャンパス 第5講義室
本講義では音響心理学の中でも、音響心理学研究の深い理解を目的として特に実験手法と得られたデータの分析法からの視点で学習します。
音を科学的に扱うためには注意深く計画された実験が不可欠です。この講義では特に音響心理研究における、実験素材の準備、実験計画、実施、分析などを扱います。(“研究の方法”を学ぶ講義なので、音楽環境創造概説2で扱うような「人はこういう仕組みで音を聞いていますよ」「こういう音を聞くとこう感じますよ」といった“先人による実験の結果わかったこと”は最低限しか扱いません。)
統計の知識があることが望ましいですが、必須ではありません。また、英語の文献を読むこともあります。
履修条件:学部生については音楽環境創造概説1および2を履修済みであること。
- 音響心理の簡単な説明
- 音の評価実験の必要性、標準規格と予測モデルの利用
- 科学的方法論
- 研究に関係する一連の流れ(研究目標の設定から実験を経て報告まで)
- 印象評価(回答属性) — 主観実験に用いられる評価語の選定方法(個別属性・全体属性)
- 印象評価(回答形式) — 主観実験に用いられる評定方法について
- 印象の定量化 — 尺度の選択と実験バイアス
- 実験の変数(独立変数の制御・統制、刺激の作成、被験者の選抜など)
- 実験の計画
- 統計分析
Google Classroomにアップロードします。
どちらを選んでも構いませんが、論文を書く準備になるAコースのほうがお勧めです。
- Aコース
- 主な対象:最終課題の内容をもって学会・研究会での発表を目指す学生、次年度の卒業・修了論文の予備実験としたい学生。
- 前期
- 夏休みから後期にかけて実施する音楽・音響に関係する実験についての研究計画書を作成・提出してください。また、後期の授業の中で(夏休み中の研究進捗を含め)30分程度で発表してもらいます。
- 後期
- 各自、音楽・音響に関係する研究を計画・実行し、報告をしてください。報告は指定のスタイルを用いて4〜8ページにまとめます。学部生の場合はグループで行うことも可能です。
- Bコース
- 主な対象:音響心理実験の概要を学ぶのが目的の学生。
- 前期
- 指定された文献の中から1篇を個人ごとに選択し、内容をA3一枚にまとめて提出してください。後期の授業の中で30分程度で発表してもらいます。
- 後期
- 音楽・音響に関係する実験について、研究計画書を作成・提出してください。
ファイル形式はPDF(不可能な場合はLibreOffice/OpenOffice形式、Microsoft Office形式、Apple Pages形式のいずれか)とし、メール添付にて提出してください。Aコースについては、提出後に査読者とのやりとりを模擬し、最終的に論文集にまとめます。
購入の必要はありません。音楽環境創造科教員室の蔵書にあるので適宜参照して下さい。
- Soren Bech & Nick Zacharov “Perceptual Audio Evaluation—Theory, Method and Application”
- 難波・桑野『音の評価のための心理学的測定法』(コロナ社, 1998)
- 境・中山『聴覚と音響心理』(コロナ社, 1978)
- Zwicker & Fastl “Psychoacoustics, 3rd ed.” (Springer-Verlag Berlin Heidelberg, 2007)
- Blauert “Spatial Sound” (MIT Press, 1996)
講義で扱う統計分析についての参考書も挙げておきました。統計をすぐ使いたい初学者には山田・村井を、理解を深めたい人に南風原をおすすめします。佐藤はさまざまな分析方法を事例付きで紹介してくれます。
- 山田剛史・村井潤一『よくわかる心理統計』(ミネルヴァ書房, 2004)
- 南風原朝和『心理統計学の基礎』(有斐閣, 2002)
- 佐藤信『統計的官能検査法』(日科技連, 1985)
この講義では音楽心理学は扱いませんが、興味のある学生には次の本などをお薦めします。
- 菅原 英樹『垂直スピーカ間のチャンネル間時間差 (ICTD) によるエコー閾値について』
- 井関 幸平『評価グリッド法を用いたヴァイオリン演奏音の評価構造抽出』
- 佐野 稜『Binaural Beatが起こす時間的に動的なITDによる変動感とその包絡線形状が与える変動方向弁別への影響』
- 鈴木 和馬『ビデオゲーム音楽のインタラクティブ性とゲーム体験の没入感の関係性』
- 池田 翔『開放型ヘッドフォンとマルチチャンネルスピーカを同時に用いた再生方式における距離感の再現』
- 上原 崇寛『日本の合唱歌手に対する「発声の補助器具」の意識調査』
- 長谷川 綺『正中面での周波数特性の違いによる音像定位精度の検証』
- 井関 幸平『ヴァイオリン弓におもりを付加した時の操作性の変化について』
- 佐野 稜『両耳間うなりの研究における振幅変調音を用いた比較の手法についての再検証』
- 伊 豊宇『異なる残響環境における箏の演奏音の主観印象の傾向について』
- 佐藤 真帆『中心周波数からの周波数比を変更した構成音による複合音のピッチ知覚について』
- 増田 安南『アナログレコードのノイズが与える「好ましさ」への影響について』
- 石田 美奈『足音から感じる重さ感覚についての研究』
- 笠原 眞由『倍音量を変化させたフルート演奏音の意味次元に関する検討』
- 張 涛『高周波数と低周波数ノイズの再生時間差による垂直定位と音像幅の変化について』
- 魯 璇『非線形歪みの検知限の測定の試み』
- 佐藤 来『モバイル振動端末を用いた音楽体験拡張技術における基礎的検討』
- 森元 一貴『タムの余韻の知覚に関する実験』
- 安達 万純『オーボエ演奏音における遠鳴り·そば鳴りに関する検討』
- 井出 将徳『「パンチのある音」とPunchyな音の相関性について』
- 加藤 亜実『飲食店におけるBGMの適切な音量の検討』
- 田中 克『ヘッドホンの遮音周波数特性と外部音に対するうるささの聴感印象について』
- 萩原 みず穂『「かわいい音」に関する評価語の分類』
- 佐藤 真帆『ポケットモンスターの鳴き声から感じる強さの印象について』
- ショーン・オブライアン『異なる映像スタイルに基づいたビデオのリバーブの相応しいさの知覚差』
- 邱 冰『非個人HRTFによる移動音の定位について』
- 朴 寿焄『ミキシング作業におけるリファレンスヘッドホンの影響に関する調査 —高・低域EQ調整を用いて—』
- 笠原 眞由『評価者のフルート演奏経験の有無による倍音量を変化させたフルート演奏音に対する「明るさ」評価の違い』
- 長島 千尋『部屋の残響が音像定位の知覚に与える影響について』
- 岡本 悠『ピアノ演奏のフレージングとその表現手法について —IOIとvelocityに焦点を当てて—』
- 椎葉 爽『コンサートホール内での収音用マイクロフォン位置の違いが3Dオーディオ再生での聴取印象に与える影響』
- 福島 綾音『映像視聴環境におけるスピーカー設置高さの違いが音像幅に与える影響とその視聴範囲の検討』
- 蘇 恒緯『空間分解能におけるハイレゾリューションオーディオのメリット —最小可聴角度についての考察—』
- 北薗 綾乃『聴取者前方の音像における奥行き方向の幅の知覚』
- 黒石 紗弥子・松浦 知也『録音における「かぶり」のもたらす聴取者への影響について』
- 辻 百合香『音楽の嗜好とテンポの違いが自律神経系に与える影響について』
- 萩原 みず穂『減衰時間の違いが音の「かわいさ」に与える影響』
- 齋藤 峻『箏の音色の主観印象評価実験』
- 志野 文音『クラシックギターにおける異弦同音と弾弦位置の違いによる音色変化』
- 津本 幸司『エレクトリック・ギターの歪み量に伴う撥弦時間と音量の変化に関する一考察』
- 劉 潔瑩『歌声の感情を感じられる方法 —歌声に含まれる感情における音響特徴分析—』
- 下西 あす夏『音声レベルの違いが映像内容の記憶に及ぼす影響』
- 野田 麻奈美『ヘッドフォンとイヤホンにおける弁別閾知覚実験』
- 今村 秀隆『小空間における初期反射音の到来方向の違いが音楽試聴の主観印象に与える影響』
- 惠谷 隆英『刺激の周波数の違いによるテンポ知覚の弁別域の変化』
- 鈴木 勝貴『無音時間の変化による音の印象変化』
- 滝野 ますみ『移動する音源の特性が定位に与える影響についての調査』
- 岩永 史弥『倍音構成の違いがサイン音の機能イメージに及ぼす影響について』
- 椎葉 爽『複数マイクロフォン用アンプリファイア間の聴覚判断』
- 橋本 優『周波数が怖さの印象に与える影響について』
- 福島 綾音『スピーカーを設置する高さによる視聴印象の違いについて』
- 班 文林『睡眠前にバイノーラルビートの音楽の受容度について』
- 鈴木 雅人『オペラ的歌声の音圧と知覚 —録音再生された歌声と実際の歌声との比較—』
- 小鷲 翔太『音楽の呈示下における、ブレイク(無音)の知覚』
- 黒岩 若菜『映像作家・作曲家・効果音制作者に於けるリバーブエフェクトの印象 —オノマトペを用いた音の評価—』
- 今村 秀隆 『リスニングルームにおける一次反射音が 音楽試聴の主観印象に与える影響』
- 渡邊 愛『音の抽象度に関する比較評価研究 —録音された具体的素材を用いて—』
- 関根 鈴花『AB方式におけるマイクロフォン間隔と収音音源の拡がり感に対する主観評価との関係』
- 崔 雄『スピーカーアレイにより、再生される音の定位に対する評価実験』
- 處 美野『音の長さと周波数変動が音の印象へ相互に与える影響 —聴覚ディスプレー/ソニフィケーションにおける音の生成手法の検討—』
- 豊澤 勉『騒音環境下でのポータブルオーディオプレイヤーの使用における音圧変動についての考察』
- 中川 研人『MP3を用いた圧縮符号化に関する主観評価実験』
- 齋藤 峻『マイクロフォンの仰角変化による知覚に関する実験』
- Strange, Adam『Semantic Evaluation of Familiar and Unfamiliar Songs Using the Repertory Grid Technique: A Preliminary Study』
- 佐藤 えり沙『残響音が演奏のダイナミクスに与える影響について』
- 高橋 享平『受聴位置と音像の関係に関する一考察』
- 土倉 律子『小空間の響きの変化と印象に関する基礎的検討』
- 藤賀 雄太『時間分解能と音源提示方向の関係』
- Kruszielski, Luiz Fernando『The Influence of 2 Different Camera Angles in the Correlation Between Some Aspects of Sound Space Perception in a Monoaural Audio-Visual Source: An Introductory Study』
- 田野倉 宏向『音像移動によるマスキングのための基礎検討』
- 山田 啓太『情動を表現した演奏とその聴取についての研究』
MARUI Atsushi
2025-04-15