授業案内 2009年度

20112010|2009|2008

授業内容

美学概論/松尾 大
金曜3限|第9講義室|通年|4単位

美学の体系的概説

佐々木健一『美学辞典』(東京大学出版会, 1995)を教科書として用いる。

授業の目的は、美と芸術についての基本的知識の習得と、基本的問題についての思考能力の養成である。

その方法は、上記の教科書の各節ごとに私がコメントを述べたあと、そこに含まれる問題を提示し、授業参加者にその問題を考えてもらうというものである。

進度は、教科書の一つの章を一回の授業にあてることを原則とする。

各章の内容は以下の通り。

基礎的な諸概念
  • 1. 美学
  • 2. 美
  • 3. 自然美
  • 4. 芸術
生産に関する諸概念
  • 5. 模倣
  • 6. 表現
  • 7. 即興
  • 8. 図式
  • 9. 想像力
  • 10. 天才
  • 11. 創造/創造性
対象に関する概念
  • 12. かたち
  • 13. 修辞的文彩
  • 14. 様式
  • 15. 象徴
  • 16. 作品
  • 17. 美的質/美的範疇
  • 18. 価値
消費と再生産に関する諸概念
  • 19. 美的態度
  • 20. 趣味
  • 21. 美的判断
  • 22. 解釈
  • 23. 批評
  • 24. 美的体験
  • 25. コミュニケーション

留意事項: ときにはバズグループによる議論の形式なども用いる。
美学特講/村上 龍
月曜3限|芸術学科会議室|前期|2単位

現代(1950年代以降)の英米美学の研究

イギリス・アメリカの美学界は、とりわけ1950年代以降、現在にいたるまで、論戦をこのむ思想的環境のなか、活発な美学的思索を連続的におしすすめている。

いまだ日本では紹介のすすんでいない、その思索の主要な成果に、いくつかのトピックにそくしてふれることが、本講義の眼目です。

とりあげる(予定の)トピックは、おおよそ以下のとおりです。

  • 芸術の定義 (芸術と非芸術の境界はだれがどうやって画すのか)
  • 芸術鑑賞と予備知識 (芸術鑑賞の正誤は問えるか)
  • 贋作のステータス (ひとたび贋作と判明したら作品の価値は無に帰すか)
  • 芸術の同一性 (ひとつのテクストで二つの作品をつくることは可能か)
  • フィクションの経験 (なぜ虚構とわかっているものに恐怖し、あるいは感動するのか)
  • 美的質 (青色の知覚とそれにともなう寂しげな印象とは、切りはなして考えるべきか)
  • メタファーの機能 (レトリックはたんなる装飾にすぎないか)
  • 自然の美的鑑賞 (自然美は芸術美とおなじしかたであつかえるものか)
  • 日常性の美学 (「芸術」などにこだわらずとも、美的な快楽はそこらじゅうに転がっていやしないか)
美学特講/松尾 大
水曜2限|美学研究室|通年|4単位

読者論

授業の目的は、近年の芸術理論の一つの焦点となっている読者概念の考察である。

最初に講義形式で私の手の内を公開し、そのあと英語の文献を講読する。

美学特講/輪島 裕介
木曜3限|第1演習室|前期|2単位

ポピュラー文化の美学と政治学

20世紀以降のポピュラー文化について、いわゆる「芸術」との関連や、政治的・経済的諸制度との関連を念頭におきながら考察する。

担当者の専門は現代日本及びブラジルのヴァナキュラー音楽だが、それに留まらない一般的な問題関心に即した内容にしたい。

美学特講/川瀬 智之
木曜3限|第1演習室|後期|2単位

20世紀の西欧と日本の哲学、芸術、芸術論における「同時性」と「形而上的なもの」について

美学特講/村山康男
金曜2限|第3講義室|後期|2単位

現代芸術論

現代の美術家のさまざまな作品や芸術思想を通覧すると、そこに見えてくるのはワークショップという概念であり、また作り手と受け手のコミュニケーションや結びつきをどのように形成していくのかという問題である。他方で、現代芸術を現代という時代や社会のあり方から広く俯瞰してみると、情報社会と消費(化)社会の諸問題が芸術のこれまでのあり方に根本的な変容をもたらしつつあることもわかる。そこで授業では、まずは個々の美術家の作品や思想を検討した上で、そこに共通して見受けられるワークショップの思想といったものをつかみ出してみる。一方、現代社会を消費化と情報化のシステムとして捉えるとき、そこには近代が芸術の本質を個性や独創性といった概念で捉えていた地平とは別のものが垣間見えてくる。消費化の契機は作り手と受け手との関係を逆転し、個性や独創性の概念をその根底から穿つ。また情報化の契機は芸術の質量的側面を空無化し、芸術の体験のあり方に変容を迫っている。それでは、ワークショップ、消費、情報化の三つの方向性の交わる地点では何が起ころうとしているのか。それを皆さんと一緒に考えていきたい。

美学演習/松尾 大
火曜3限|第1演習室|通年|4単位

美学文献の読解

この授業は美学テクストに即して思考能力を養成することを目的とする。

そのために、美学テクストを手がかりにいろいろな思考を実際に試みるという方法を採用する。

「いろいろな思考」には、テクストを直接に対象とした形式の思考(翻訳、注釈、解釈、批判、評価)と、テクストを間接的に対象とした形式、つまりテクストから触発される問題について、テクストから或る程度独立して考えることとがある。

参加者には、上記の作業の他、当該テクストと別のテクストを比較した結果の口頭での報告を随時課す。

使用するテクストは日本語または英語とする。

領域的には、音楽、美術、舞踊、映画、演劇、文学、メディアアート、アニメーションなど、できるだけ広いジャンルにわたる文献を選択することによって、多様な芸術現象に対する関心を喚起したい。

  • ウォーカー, J. / チャップリン, S. 『ヴィジュアル・カルチャー入門 ― 美術史を越えるための方法論』 第8章
  • Davies, Stephen, Philosophical Perspectives on Art, 2007.
美学演習/村山 康男
水曜3限|芸術学科会議室|通年|4単位

美学芸術学文献の読解

この授業は美や芸術に関する文献を読み込みながら、それらが提起する多様な問題を考える力を養うことを目的とする。

今年度は痛みや傷と芸術表現との関係を論じる文献を参加者と相談して選びたい。

現在念頭にあるのは、例えば、フランスの哲学者のジャン=リュック・ナンシーの『複数にして単数の存在』とかイタリアの美学者のジョルジョ・アガンベンの『幼児期と歴史』などである。

前期には日本語の文献、後期には英語の文献を扱う予定である。

論文作成演習/松尾 大
2単位

卒業論文作成のための演習

芸術学科学部3~4年生(平成17年度入学以降の学生)を対象とする必修科目。

論文指導教員が決まった後(4年次)実施。


美学課題演習/松尾 大
芸術学科会議室|通年|4単位

論文作成指導

美学専攻の大学院生を対象とする。

院生各自が各々の研究テーマに沿った発表をし、参加者全員でそれについて議論する。