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資料紹介(CD)

6.

Boëly, Alexandre Pierre Francois. Pieces d’orgue & musique sacrée.
François Menissier; Ensemble Gilles Binchois; Dominique Vellard. Tempéraments: TEM 316021 (CD)
Recorded 1999, 2000, released 2001.
請求番号: CD 3287

 A.P.F. ボエリ(1785-1858)は、ヴェルサイユで宮廷に仕える音楽家の家系に生まれ、父や祖父に音楽の手ほどきを受けた。フランス革命が勃発し王政が崩壊するという激動の時代にあって、ボエリ家もヴェルサイユからパリへ移り、質素な生活を余儀なくされた。 ボエリは11歳のときパリ音楽院に入学し、ヴァイオリンとピアノを学び始めたが間もなく中断、その後ほとんど独学で音楽家への道を歩み、ピアノ教師、オルガニストとして生計をたてるようになった。
 ボエリは1834年から38年パリのサン・ジェルヴェ教会の臨時オルガニストを務め、1840年サン・ジェルマン・ロクセロワ教会のオルガニストに就任した。 彼はバッハやクープランといった過去の巨匠たちの作品を深く研究して、フランスにバッハの音楽を紹介した最初のオルガニストの一人となったばかりでなく、バッハを演奏するために、サン・ジェルマン・ロクセロワ教会のオルガンに初めてドイツ式のペダルを導入したことでも知られている。 繊細な感覚と卓越した対位法の技術を身につけたボエリのオルガン作品は、重厚で、ロマンティックな叙情性にあふれるものが多く、限られた地域ではあったが当時かなりの評判を得た。 しかし次第に、彼の音楽様式は厳格すぎるとして疎まれるようになり、1851年には教会オルガニストの地位を解かれることになった。
 作品はオルガン曲のほかピアノ曲、室内楽曲などを多数残した。 ボエリは公的な職務に就いて音楽活動をしていた期間も短く、広く一般に知られていたとはいえないが、一部の見識ある人たちからは厚く信頼、称賛され、またフランク、サン=サーンスといった若い芸術家たちの尊敬を集めて、後のフランス音楽に与えた影響は大きい。
 このCDはボエリのオルガン作品選集であると同時に、モテットなどの典礼音楽も含まれていて、当時の教会音楽の様子を垣間見ることができる。 録音には、ボエリが弾いていたオルガンを意識して、当時の響きに近いドール、トゥールーズの歴史的にも重要な2つのオルガンが使い分けられている。 CDの前半ではドールのオルガンを使用して、サン・ジェルヴェ教会のために書かれたクリスマスの曲を中心にオルガン独奏曲とモテットが、 また後半ではトゥールーズのオルガンによって、比較的規模の大きなオルガン作品と共に、ボエリの同時代人で後援者でもあったフランソワ=ルイ・ペルヌ、フェリックス・ダンジューのミサ曲からの抜粋が取り上げられている。

使用楽器: The organ of the Collegiate Church of Notre Dame, Dole (Jura) Riepp (1754), Callinet (1788) and Stiehr (1830-1856) / The Poirier-Lieberknecht organ (1862-1864) of the Basilique Notre Dame de la Daurade, Toulouse (饗庭 裕子)

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