2017年7月11日 18:00~19:30 会場:東京藝術大学美術学部中央棟1階 第一講義室
登壇者:保科豊巳(本学理事)、日比野克彦(本学美術学部長)、千住博(日本画家)、古田亮(本学大学美術館准教授)、司会:秋元雄史(本学大学美術館館長)

「藝大コレクションと美術教育」と題されたこのシンポジウムは、藝大コレクションのこれまでの歴史をたどりながら、藝大美術館のコレクションの役割と、制作者のための発表の場所としての美術館展示室の可能性を討議する機会となりました。
最初に、展覧会担当の古田先生による展覧会概要の説明のあと、古美術から多種多様な卒業制作など多岐にわたる藝大コレクションがこれまで展示・活用されてきた歴史と、それらを収蔵・展示する藝大美術館の独自性が紹介されました。
続いて、登壇者である千住先生、保科先生、日比野先生からは、学生時代からはじまる「藝大時代」の活動に焦点をあて、各々の先生方がどのようなスタンスで制作活動を進めていたのか、そしてそのとき、藝大は自らにとってどのような場所であったのかを振り返っていただきました。
そして、各々の先生が卒業制作を振り返りながら、藝大美術館のコレクション展示の場、
そして学生にとっての展示スペースとしての将来像に話題が広がりました。
藝大コレクションについて:
・学生時代、芸術資料館(当時)に展示されていた作品から学ぶことが本当に大きかった。絵因果経を模写する経験も大きかった。
・古い作品に触れる経験を重ねることから、新しいものを生み出す刺激を得てほしい。
・次の世代を育てるときに、藝大コレクションに触れられる機会はとても良いはず。しかし、文化財の破壊につながることも避けねばならず、どう折り合いをつけるか。
展示スペースとして:
・学生にとって、ホワイトキューブの中で展示する経験値を重ねさせたい。制作の現場と展示の現場をクロスする経験があるとよい。
・学生に展示スペースとして無制限に開放するということは不可能だ。そのなかでどのように折り合いをつけてゆくかが考えどころになる。
・展示空間によって作品は変わるが、大学美術館の展示室スペースは、ある意味で因習的な美術館空間であり自由度は低い。この制限を受け入れたうえで展示を考えるしかない。
最後に、このシンポジウムが、学生にとっての制作発表の場としての美術館と、コレクションを継承し教育に資する活動を行う美術館という二つの側面を持つ藝大美術館の可能性をさらに考える契機となった、という秋元館長の総括とともにシンポジウムは終了しました。
ご来場の皆様、登壇くださった先生方に感謝申し上げます。