Ⅲ.博士学位授与プロセスのガイドライン

本ガイドラインは、博士課程入学から学位授与に至るまでのプロセスを明文化したものである。ここではとくに、運用面から、芸術実践と個別テーマに基づく研究の一体化がはかられるよう、また、評価の妥当性が成果公開と審査形式によって担保されるよう配慮されている。

3.映像研究科

3.1. 入試者選抜

博士後期課程在籍中に、高度な研究を継続的におこなう資質を判断するために、これまでに芸術活動を行ってきた者にあっては、課程入学以前に制作された作品の質を評価し、能力の有無をみる。また、研究者においては、論文あるいは著作等の研究成果を評価するとともに、継続的な研究を遂行できるためのコミュニケーション能力の有無を見る。なお、入学志願者は具体的な研究計画の提出が求められる。

3.2. 修了要件

本研究科に3年以上在学、必須科目10単位を取得し、かつ必要な研究指導を受けた上、博士論文の審査(論文審査、作品審査)及び試験に合格すること。

3.3. 指導教員

入学の際、各学生に指導教員(主任指導教員及び関連指導教員の2名)が定められる。指導教員は、研究指導を始め、授業科目の履修、休退学など在学中の学業に関するあらゆる面で学生の指導をおこなう。学生は、学年の始めに指導教員(2名)と相談の上、「履修及び研究計画届」を作成し、年間の指導計画と内容を示す。

3.4. 学位授与

本研究科の博士後期課程を修了した者に対しては、「博士(映像メディア学)」の学位を授与する。

3.5. 履修科目

①映像メディア学特別講義(2単位)
1年次の前期15回に、オムニバス形式でおこなう講義。
②映像メディア学特別研究Ⅰ-A,Ⅰ-B、Ⅱ-A,Ⅱ-B(各1単位)
1年次、2年次の前期、後期に、特定の分野を定めてオムニバス形式でおこなう講義。学生個別の研究課題、内容に応じ、指導教員(2名)のもとで、必要な授業内容を検討し、開設される。在学生は、自身の研究活動報告をおこなう義務がある。
③映像メディア学特別演習Ⅰ-A,Ⅰ-B、Ⅱ-A,Ⅱ-B
1年次、2年次の前期、後期に、「履修及び研究計画届」に基づいておこなう。1年次にはサーベイ論文として発表、提出し、2年次には学位論文審査の予備審査として提出する。

3.6. 学位審査

学位審査は、予備審査、本審査からなり、予備審査を合格した者が、本審査を申請する資格を有する。

3.6.1. 予備審査
(1) 申請
 修了予定年前年度時の1月末まで、①学位論文予備審査願(正副各1部)と、②研究/創作活動目録(予備審査)、③学位論文の要旨(予備審査)、④履歴書の各1部を映像研究科教務係に提出する。
(2) 成績評価
 成績評価は、以下の「学位申請ポイント算出表(案)」に従って行われ、5ポイント以上であることが、合格の条件となる。
研究論文 プロジェクト 作品 ポイント
  • 著書(単著)
  • 査読付き学会誌等への論文執筆(海外)
  • 国際的プロジェクト(シンポジウムやセミナー、ワークショップ等)の企画・立案・運営にメインスタッフとして参画
  • 海外各種コンペでの入賞
  • 国際映画製作者連盟(FIAPF)公認、もしくは同等の映画祭で受賞(メインスタッフとして参加)
  • 海外における国際展への招待出品
  • 海外における国際展へのコンペ入選
4
  • 査読付き学会誌等への論文執筆(国内)
  • 学会、シンポジウム等での口頭発表(海外)
  • 国内プロジェクト(シンポジウムやセミナー、ワークショップ等)の企画・立案・運営にメインスタッフとして参画
  • 国内各種コンペでの入賞
  • 国際映画製作者連盟(FIAPF)公認、もしくは同等の映画祭に出品(メインスタッフとして参加)
  • キュレーターが関与するグループ展への出品(海外)
3
  • 学会等での口頭発表(国内)
  • 学会等でのポスター発表、デモンストレーション(海外)
  • 映像研究科紀要への寄稿(研究ノート)
  • 国内におけるプロジェクト(シンポジウムやセミナー、ワークショップ等)の企画・立案・運営にスタッフとして参画
  • キュレーターが関与するグループ展への出品(国内)
  • 国内外各種映画作品にメインスタッフとして参加(各領域のチーフとして。自主、商業は問わず)
2
  • 一般誌での論考等執筆
  • 国内各種プロジェクトへの参画
  • 学外での個展、グループ展への出品
  • 国内外各種映画作品にスタッフとして参加(自主、商業は問わず)
1

算出の際には、①該当する各項目において、連名で発表した場合には、1/nポイントとする。②論文・プロジェクト・作品などで2つ以上の項目に該当する場合は、上位の得点に換算する。③同一の内容の論文・プロジェクト・作品などは原則として1回限りのポイントとする。

3.6.2. 本審査
(1) 本審査の構成
 本審査は、申請、中間審査会(非公開)、審査会(公開)からなる。
(2) 本審査申請
 修了予定年時の4月末まで、①学位論文本審査願(正副各1部)と②研究/創作活動目録(本審査)、③学位論文の要旨、④履歴書、⑤学位論文及び本審査会の形式についての各1部を映像研究科教務係に提出する。
(3) 中間審査会【非公開】
 中間審査会の時期は、修了予定年度の7月で、学位論文と研究領域により研究作品に関して、口頭発表をおこなう。
(4) 審査会【公開】
 審査会(口頭発表と研究領域により研究作品の発表)の時期は、修了予定年度の10月にする。原則として本審査会前に、学位論文本編の初稿をPDF形式にて、主査、副査へ提出。これに基づいて口頭発表をおこなう。研究作品は、展覧会または上映会として発表する。
(5) 学位論文本編の最終稿の提出
 学位論文本編の最終稿を、原則として12月に、PDF形式にて、主査、副査へ提出。以降の論文の修正は原則的に認めない。
(6) 成績評価
 本審査の成績評価は、下記の審査項目等に従っておこなう。
①課題設定
・研究の目的と位置付けが適切で明確であるか。
・従来研究の調査が十分であるか。
②研究への取り組み
・関連する専門知識を十分に習得しているか。
・課題に対して適切なアプローチがなされたか。
③研究完成度
・設定した課題に対して、適切な方法論を用い、研究成果が十分に得られているか。
④論文表現
・論理的かつ明確な記述がされているか。
・論文としての体裁が整っているか。
⑤発表表現
・研究内容をわかりやすく発表したか。
⑥質疑応答
・質疑に的確な応答ができたか。

3.7. 最終試験

最終試験は公開。原則として2月に開催する。

3.8. 論文の提出及び公開

最終試験を合格した論文は、製本を行い、修了式まで教務係へ3冊提出し、本学附属図書館、映像研究科、国立国会図書館で保管する。