リサーチ活動

Ⅲ.国内実技系大学院に対する調査

3.国内実技系大学院に関するデスク・リサーチ及びアンケート調査

平成21年度は、日本国内における博士後期課程を有する大学院についての情報収集の一環として、各教育機関のウェブ・サイト、学校案内など用いてデスク・リサーチを行った。調査の結果、平成21年現在日本国内では、26の教育機関が大学院博士後期課程を設置していることがわかった。またリサーチセンター主催の意見交換会への参加連絡時にアンケート調査への協力を依頼し、都合により参加がかなわなかった大学を含め11の大学より回答を得、ここにその結果を報告する。

アンケート調査協力校リスト
  • 女子美術大学大学院
  • 多摩美術大学大学院
  • 日本大学大学院
  • 武蔵野美術大学大学院
  • 長岡造形大学大学院
  • 金沢美術工芸大学大学院
  • 京都市立芸術大学大学院
  • 京都造形芸術大学大学院
  • 大阪芸術大学大学院
  • 倉敷芸術科学大学大学院
  • 広島市立大学大学院
1.実技を主体とする美術系博士課程に関する質問

アンケート調査の協力校11校のうち、7校は1990年代に大学院が設置され、美術分野における博士後期課程の設置は、1990年代が3校、200年以降が8校であった。博士課程の定員は、各大学院の規模にもよるが、多くは10人未満と10~20人を超えるのは協力校中4校程度である。博士課程の在籍学生数については、全体的に増加傾向があるが、留学生数については年度による大きな傾向の変化はみられない。

2.課程博士学位申請、審査、博士論文執筆に関する質問

審査対象についての質問には、アンケート調査の協力校11校のうち10校までが「作品と論文」を審査対象とすると回答している。審査方針については、「実技能力を重視する」「論文のクオリティを重視する」はほぼ同数であり、「作品と論文の総合評価」とコメントした回答も散見された。

予備申請から学位授与までの年度スケジュールは、予備申請の時期が、5月~7月、9月~11月という二つの時期に分かれた。本申請は10月~2月までの間に行われ、論文、作品の提出期限もこの期間に行われている。審査日程は同年12月~2月、学位授与は少数の例を除きほぼ全校が3月としている。

回答協力校の全て修業年限は3年とし、満期退学後に一定期間学位申請を認めるか否かについては、やはり全てが認めるとしている。期間としては、3年間とするところが最も多いが、5年や無期限とするところも数校あった。

博士論文の執筆に関しては、7校が論文作成技術関連の授業を開設している。授業の形式は演習形式による論文指導が多いが、9校までが論文執筆に関して、主査及び副査の教員が個人指導を行っていると回答している。

修士課程修了あるいは博士課程入学選抜時での論文の要求の有無について、11校中5校が修士論文を課しているとし、8校から博士課程選抜試験に小論文を課しているとの回答を得た。また出願書類として作品以外に研究計画書やポートフォリオの提出を求めるところも多い。

3.実技系博士学位授与制度に関する国内外の動向

日本国内では2009年時点で26もの大学院に置いて博士課程が設置されている。ウェブ・サイトの情報による比較ではあるが、海外でも実技系の博士課程をこれだけ多数設置しているのは、イギリス、次いでオーストラリアが挙げられる程度である。海外では近年、オーストラリアなどを中心に、実技系博士課程のプログラムについて活発な研究、論議が行われている。一方、日本国内では、各校で実技系博士学位授与制度について試行錯誤し整備を行っている状況にあると言える。

(平成21年度活動報告書)