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藝大リレーコラム - 第四十九回 伊藤有壱「立体アニメーション演習におけるコロナ対応再び」

連続コラム:藝大リレーコラム

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第四十九回 伊藤有壱「立体アニメーション演習におけるコロナ対応再び」

横浜キャンパスの大学院映像研究科ではコロナ禍に際し全学共通の対応指針と行政指導の下、各専攻も工夫を凝らして授業を行ってきた。アニメーション専攻では個人による作画作業、デジタル中心の制作環境である事から比較的対応が順調になされてきたが 、一部の演習では対面作業が必須であり、その一つが私の担当「立体アニメーション特別演習」である。

従来グループワークで球体金属関節人形を使ってサイレントのストップモーションアニメーションを作ってきた。現場で育まれる学生間のコミュニケーション開発や、現場を共にする一体感はオンラインでは不可能かと思われたが、2回ほどの対面授業の後、状況は悪化し急遽オンライン対応に切り替えざるを得なくなった。つまり学生一人ひとりにタブレットを支給した自宅撮影となり、「出会う事なく関わる4人の物語」を題材とした、オンライン上のグループワークとなってしまったのだ。そんな迷宮の如き出題設定の下、世代ならではのデジタルリテラシーが功を奏し学生間のオンラインミーティングは頻繁に行われ、完成した映像は「ZOOM飲み会」「SNSでムービーを見まくる」を題材とする等工夫が凝らされ(演習ゆえ作品よりも気楽に取り組める自由さも手伝ってか)、設定を消化した映像が一人の欠落もなく提出に至ったことに嬉しい驚きを感じたものだ。変更につぐ変更に対応してくれた専攻助教・助手チームの協力にも深く感謝したい。

さて今年はといえば、、、残念ながら対面を最小限に抑えた昨年同様のスタイルとなった。
正直辛い気持ちでクラスルームにアップされた学生のキャラクターデザインと設定、それが演じる動きについてのミニレポートを見ていたが、次第に画面から発される創意の輝きにハッとさせられた。アイデアの視点、リサーチの鋭さ、独自性が実に面白いではないか!
そうだ。創作者にとって「集中」こそ最も幸福な要素の一つでもあるのだ。この閉塞感あふれる状況を「集中」に切り替える学生の学びに対する真摯な信頼は企画に現れた。未だ感染症収束の気配は見えない非常時ではあるが、だからこそ生まれ来る学生達の創作衝動をしっかり支えていけたらと願う。

さあ、今日から演習本番が始まる。

 

写真(上):感染防止対策を徹底し実施しているアーマチュア講習の様子。

 

 


【プロフィール】

伊藤有壱
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻教授 立体アニメーション領域/アニメーションディレクター 1962年東京生。本学美術学部デザイン科卒業。VFX、コンピューター映像制作を経て 1998年I.TOON Ltd.を設立。同代表。クレイを始め技法を複合駆使した「ネオクラフトアニメーション」を核にキャラクターデザインなどで幅広く活動。代表作に、NHKEテレ放送26年目となる「ニャッキ!」、みんなのうた「グラスホッパー物語」、ミスター ドーナツ「ポン・デ・ライオン」TVCM、宇多田ヒカル「traveling」MVアニメーション担当、平井堅「キミはともだち」MV。1997年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞。2007年横浜文化賞・文化芸術奨励賞受賞。2012年オリジナル短編「HARBOR TALE」チェコZLIN FILM FESTIVAL最優秀アニメーション賞・観客賞。2018年ALBINBRUNOVSKY名誉勲章受賞(スロバキア)。クレイアニメ制作ソフト「CLAY TOWN」プロデュース、2017年全国都市緑化フェアマスコット「ガーデンベア」 デザインなど。2020年18th広島国際アニメーションフェスティバルでは国際審査委員長を務めた。日本アニメーション協会理事。ASIFA JAPAN理事。