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藝大リレーコラム - 第五十八回 麻生和子「アメリカの底力」

連続コラム:藝大リレーコラム

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第五十八回 麻生和子「アメリカの底力」

このコロナ禍もやっと終盤に近付いたかと感じるようになった5月に一足先に規制の緩和されたNYに行く機会があった。東京からの長い空の旅を終え、時差解消に陽を浴びようとホテル前のセントラル・パークに出かけた。2年前、悲惨な医療崩壊の映像がTVに溢れていたNYは何処へやら・・・青空の広がるセントラル・パークは新緑が美しく、以前と変わらず人々で賑わっていた。此処に来る度に1850年頃、街の郊外の荒地に南北4km、東西800m(皇居の3倍)の広大な公園を作ったアメリカ人の先見の明に感心する。そして今、この公園は高層ビルに囲まれても、少しも窮屈さを感じさせない都会のオアシスだ。何とこの広大な公園は市でも、国でもない、多数の個人の集まりによって運営されていると、アメリカ人の友達が誇らしげに話してくれた。個人が尊重される如何にもアメリカらしいシステムだと思った。

NYに来た目的の一つはAsian Cultural Council (ACC)が創立60周年記念に催すファンド・レーズのガラに出席する事だ。ACCはアートを通した国際交流を目的とし、有望な芸術家を幅広く支援している財団で、日本では草間彌生、村上隆、武満徹、朝倉摂、高階秀爾、田中泯等々といった日本文化を支えた多くの人達が若い頃にACCのグラントを貰って世界に羽ばたいている。現在も藝大出のグランティは多い。

ガラ当日は天気もよく、会場はダウン・タウンにある普段は大きなライブ・ハウスといった様な所だった。レセプションルームではNOマスクで個性的に着飾った老若男女が人をかき分け、シャンパングラスを片手に歩き回っている。その光景に一瞬ギョッとしたが覚悟を決め人々の中に入って行った。4年程、ACCのNY本部の理事をしていたので顔見知りも多く、皆と再会を喜びあった。暫くするとテーブルへ案内が始まり、幅広い階段を転ばぬように降りて会場へ、ぎゅう詰めのテーブルに名前を見つけて座る。お隣は隈研吾さんでやはりACCのグランティ。台湾のバイオリニスト林亮昭さん、アーティストの蔡国強さんにも久しぶりにお目にかかった。皆さんACCのグランティで、成功した今も恩義を感じて後輩の為にと、いつまでも貢献して下さる。これもアメリカン・スピリットだ。食事が始まり、和やかな雰囲気の中で、若い時に中国大陸からACCのグラントを得てNYにやってきた舞踏家Jin Xingのビデオが流れた。若いダンサーとしてやって来た彼はその才能をNYで開花させ、今はアメリカ国籍を得て、何と性転換して女性になり、後輩の指導もしている。ビデオの終わりに美しい彼女が会場のテーブルから立ち上がると拍手喝采だった。最後はラフなスタイルの若いダンサー達がストリート・ダンス風に広い階段を使って見事な踊りを披露し、NYらしいガラはお開きとなった。 

翌日、盛会おめでとう!とACCのディレクターに話を聞くと、280名が参加し、1テーブル1200万円のテーブルが8つも売れて、ひと晩の売り上げは2億円超だったとホクホクの様子だった。寄付が税控除になるアメリカでは高額所得者は自分で寄付先を決める。その巨大な富の力、中国から来た1人のダンサーのサクセス・ストーリー、個人の集まりが運営するセントラル・パークで、寛ぐ様々な人種の集まり:アメリカ社会は問題山積み、政治的分断が進み衰退していると言われながらも、デジタル革命の先端を走り、社会に根付く個人尊重の文化は新な変革に十分に対応しているように思われた。

ACCガラにて。右下が私(麻生和子理事)。左隣から時計回りに、隈研吾さん、左上のJosie Natoriさん、PJ Pascualさん、蔡国強さん。

ACC創立60周年記念のファンド・レーズガラのディナー

 

写真(上):セントラル・パーク

 


【プロフィール】

麻生和子
2005年に新進の日本人アーティストを紹介するプラットフォーム:「団DANS」を創立、ディレクター兼オーガナイザーを務める。 非営利のオールボランティアベンチャーで、2020年までに日本国内およびワシントンD.C.、ベルリン、ロンドン、パリなど海外を含め17回の展覧会を開催し、170名以上のアーティストを国内・国外に紹介し、彼らのキャリアに貢献。2017年に日本の現代芸術への支援に対して第7回東京賞を受賞。 慶應義塾大学で社会学の学士号を取得し(1969年)、現在は同大学最古OB会である慶應倶楽部の評議員(2008年~)、財団法人:ラスキン文庫の評議員(2005年~)を務める。2000年には、シスター筧と有志とで共同でフィリピンに幼稚園を設立するなど、慈善活動にも力を注いだ。2014年よりアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)日本アドバイザリーボードのメンバーを務め、2018年よりACC日本財団を設立し、現在、ACC日本財団代表理事を務める。2020年より東京藝術大学 理事(学長特命担当/キャリア支援室担当)を務める。