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連続コラム:ゲ!偉大!

第二回 卒業・修了式 受領代表者座談会


新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から中止となった令和元年度の卒業・修了式。
本来であれば、「受領代表者」として登壇し、賞状を授与される予定だった買上作品賞、サロン・ド・プランタン賞、アカンサス音楽賞、大学院アカンサス賞、それぞれの受領代表者に学長室にお集まりいただき、澤学長と対談を行った。


 

澤学長

まずは皆様、ご卒業おめでとうございます。
本当に残念なことですが、新型コロナウイルスの影響で卒業・修了式が中止となってしまいました。本来ならば奏楽堂で壇上に上がっていただき、直接賞状を授与したかったのですが…。
せっかくですので、素晴らしい賞を受賞された皆様と対談させていただければと思い、この「ゲ!偉大!」で学長室にお招き致しました。藝大で過ごした日々の思い出などについてお伺いできればと思います。

まずは美術側のおふたり、YUさんと池上さんはそれぞれ買上作品賞、サロン・ド・プランタン賞の受領代表者に選ばれています。YUさんは韓国のご出身なのですか?

YU

そうです。学部は韓国のソウルにある大学を卒業し、修士課程を藝大の彫刻で過ごしました。

澤学長

今年の卒業・修了作品展では、お部屋のような作品を展示していましたよね。私も見ました。

YU

ありがとうございます!
修了制作では「帰るところ」というタイトルで「日常」の大切さをテーマに作品を作りました。
普段の生活を送るなかで、震災や事故が起きると生き残った家族の生活の形が変わってしまい、日常を失ってしまうことがあります。震災や事故にあった人が自分の知らない人でも、みんな憂鬱な気持ちになったりする。そんな中、生きている人にとって一番大切にしなきゃいけないのは、「普通に日常を過ごす」ということなんじゃないかな、と思って。これからもそんなアーティスト活動を長く続けていければいいなと思っています。

YU SORA 卒業修了制作《帰るところ》 撮影:加藤甫

 

澤学長

制作にはどれくらいの期間がかかりましたか?

YU

2、3か月くらいです。まずは、この空間を構成するにはどの素材が一番いいのかを半年くらい悩みました。藝大では木彫を学んでいたのですが、木彫では絶対に間に合わないと思ったので、段ボールでやってみようかなと決めてから徐々に進み始めました。布を貼ったり糸を縫ったりするのは後輩にもたくさん手伝ってもらいましたね。

澤学長

大学時代を韓国で過ごし、その後なぜ、修士の進路として藝大の彫刻を選んだのですか?

YU

藝大の彫刻を選んだ理由は、木彫を学んでみたかったからです。木彫は韓国ではあまりやっていないことなので、やってみたいと思っていました。形を作れるものをやってみたかったんです。

澤学長

池上さんは建築ですね。「田中一村美術館」という作品でサロン・ド・プランタン賞を獲りました。おめでとうございます。
詳しくはないのですが、田中一村は個性的な絵を描く画家で、本学の前身である東京美術学校に入学して2か月くらいで辞めてしまった人なんですよね。もともと、田中一村が好きだったのですか?

池上

ありがとうございます。

田中一村は奄美の風景を多く描いている日本画家なのですが、私の出身地である千葉県で若い頃作家活動をしていました。そういう繋がりもあって、当時中学3年生くらいの時に千葉市美術館で開催されていた田中一村の展覧会に、母親に連れられて観に行ったことがあるんです。当時はただ連れられて観に行っただけなのに、彼の絵にすごく心を打たれました。私が美術に興味を持ったきっかけでもある画家だったので、藝大の修了制作として田中一村をテーマにしました。
この美術館は彼の絵を展示しそれを鑑賞するのではなく、建物に開けられた開口によってフレーミングされた奄美の風景を鑑賞するという「絵のない美術館」になっています。
一村は散歩を朝晩の日課としていて、そこで見た風景をスケッチや写真として溜めて、絵の参考としていたようなんです。なので、この美術館もフレーミングされた奄美の風景を長い散歩道で繋いで、散歩をしながら楽しむことができる屋外美術館になっています。

池上 里佳子 修了制作《田中一村美術館》

澤学長

一村が生きて、絵にしたいと思った風景を一緒に鑑賞できるということですね。建築というとすぐに建物を想像してしまいますけど、それだけではないのですね。

池上

そうですね。この美術館は大きな建築物はなく、自然と建物が等価に扱われている。公園のようなイメージです。

澤学長

池上さんはそもそも建築に興味を持ったのはいつ頃からなのですか?

池上

私はもともと空間デザインとかに興味があったんです。藝大は大学院からで、学部は他大学なのですが、そこはインテリアデザイン、ランドスケープ、建築の3分野が入っている学科でした。インテリアやランドスケープだけではできない、建物の外観のデザインとかも含めてデザインしたいなと思ったので建築に進むことにしました。

澤学長

修了後の進路について伺えますか?

池上

建築の設計事務所に就職します。絵を描くことも好きなので、作家活動も続けていけたらいいなと考えています。

澤学長

田中一村美術館では、奄美という自然豊かな場所で、その自然を生かす形を設計しました。今後の作家活動におけるポリシーなどはありますか?

池上

すごく小さなささやかな建築物だとしても視野を広く持てるような、そういう設計の仕方で考えていきたいです。

澤学長

次は、音楽側のアカンサス音楽賞、大学院アカンサス賞を受賞された山上さんと加藤さんです。
山上さんは指揮科で、先日は卒業演奏会でシベリウスを指揮されていましたね。私も審査をさせていただきましたが立派な演奏でした。楽器はなにかやっていたんですか?

山上

ヴァイオリンを4歳から習っていましたが、途中で退いてしまいました。
練習があまり好きではなかったんです。

澤学長

練習嫌いは私と一緒だ(笑)。どちらかというと小さい頃は無理やり習わされた感じなのでしょうか?

山上

記憶にはないんですけど、ヴァイオリンは自分からやりたいと言ったそうです。
指揮は高校2年生の夏に、久しぶりにオーケストラのヴァイオリン奏者として参加したときに感銘を受けて。これは指揮者になりたいなと思って始めました。
高校3年生の4月から本格的に習い始めて受験の準備をしていたのですが、1年目は間に合わなくて一浪して藝大の指揮科に入学しました。

澤学長

それでも一浪で入れたんだから、立派なものです。ヴァイオリン以外に楽器は?

山上

ピアノもヴァイオリンと同じ時期に始めて、それは今でも続けています。父が指揮者で、母が歌をやる人だったので、環境的に音楽に触れることが多かったのかもしれません。
ピアノは昔から聞くのも、弾くのもずっと大好きでした。ヴァイオリンって一人でやっても限られた音しか出せないというか、ピアノのように多くの音を同時に出すことはできない。ちゃんとオーケストラを聞くようになってようやくその楽器の魅力に気付いたような気がします。

澤学長

藝大の上野キャンパスは美術学部と音楽学部がありますが、一緒になってなにかやったことなどありますか?

山上

残念ながらあまりなかったです。来年度からは大学院に行き、まだしばらくは藝大にいるので交流できたらいいなと思います。

澤学長

加藤さんは古楽科のフォルテピアノですね。

加藤

はい。学部は楽理科で、2年生の時に副科でフォルテピアノを始めました。もともとピアノは弾いていたのですが、フォルテピアノという古楽の新しい表現に出会って、もっと探求してみたいなと思いました。

澤学長

フォルテピアノだと、やはりレパートリーの中心は18世紀の半ばくらい、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのあたりですか?

加藤

そうですね。藝大には主に使っているフォルテピアノは3台あるんですけど、現代に近いものだと、シューマンとかメンデルスゾーンとかもレッスンの中で見ていただきました。

澤学長

現代のピアノと一番違うところはどこですか?

加藤

なにもかも違いますね。最初はびっくりしました。タッチの仕方がものすごく違っていて、今のピアノより「喋るように」弾かないとなにも伝わらないというか。指が喋ってないと、母音だけで喋る人みたいになって、何を言ってるのか分からない感じになるので、その違いはすごく大きいと思います。でも逆に、その方法で現代のピアノを弾くと、ものすごくいろんな表現ができて。それはそれで面白いなと思います。なかなか現代のピアノではやらない方法が学べると思いますね。

澤学長

今後の音楽活動についてはなにかお考えですか?

加藤

人に音楽を教えることも好きなので、古楽器に限らず小さい子に教えたりしています。また、古楽の活動は自分でやっていかないとなかなか機会がないので、できるだけ自分で機会を作って、ひとつの表現方法として古楽が世間に馴染んでいけばいいなと思っています。

澤学長

コンサートピッチはやっぱり低いんですか?430くらい?

加藤

そうですね。バロックだと…チェンバロだと415で、古典派だと430が基本なんですけど、楽器によっては415のものをあるし、440っていうものもあって、バラバラですね。

YU池上

????

澤学長

美術のおふたりは分からないですよね(笑)。
フォルテピアノっていうのは現代のピアノの祖先のようなもので、そういった昔の楽器を学ぶ古楽科という学科が音楽学部にはあるんです。
さっきの430とかっていう数字は基準となる「ラ」の音のヘルツ(周波数・振動数)のこと。現代は大体440~442ヘルツくらい。昔の楽器って低いんですよね。
美術のおふたりは音楽は好きですか?

 

池上

実は私も、6歳から高校2年生くらいまでピアノをやっていました

澤学長

じゃあ結構弾けるんじゃないですか?

池上

いや、全然!藝大のピアノ科の皆様と比べられるようなものじゃないです(笑)。ただ楽しく弾いていました。今はもう家にピアノがなくなってしまったので、機会がないですね。

澤学長

ピアノ貸してあげるって言ったら弾きますか?

池上

いやー…弾かないですね(笑)。

YU

私も実は小さい頃、ピアノ教室に2年だけ通っていたんです。でもたぶん全然興味がなかったんだと思います。あまり覚えていないですね。ピアノ教室で漫画を読んでいた記憶しかないです(笑)。でも聞くのはすごく好きです。

澤学長

そうですか(笑)。
逆に音楽のおふたりは美術的なことに興味があったりしますか?

山上

僕は鉄道がすごく好きで、水戸岡鋭治さんという九州の電車をよくデザインされている方の展覧会には何度も行っていました。

澤学長

なるほど。そっちか(笑)!
てっちゃん(鉄道ファン)なんですね。

加藤

私はまったく絵が描けないので、あまり美術に興味を持っていなかったんですけど、この大学に入って学生証を持つようになると、周りにあるたくさんの美術館や博物館に安く入場できるので、よく行くようになりました。最初はどう感じたらいいか分からないまま行っていたんですけど、音楽と繋がるところもあると考えると、最近はなんとなく楽しめるようになりました。
藝祭委員をやっていた頃によく美術側の人と話す機会があって、全然違う考え方や発想を持っているんだなと衝撃を受けたことを覚えています。楽しかったですね。

澤学長

今日はありがとうございました。本当は最後に固い握手で終わりたいんだけど、新型コロナの影響があるからね。WHO推奨の肘タッチで(笑)!
本当にご卒業おめでとうございます!

 

 

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『買上作品賞』

本学の前身である東京美術学校創設以来、今日まで130年に及ぶ伝統がある。

昭和52年度からは音楽学部作曲科の作品を、平成19年度からは大学院映像研究科の作品の買上げを行っており、買上げ作品は、自画像を含めて約9,000点になる。買上げ作品は、本学における教育研究の貴重な参考資料として活用されていることは言うまでもなく、本学の歩み、さらには、日本の近代美術を具体的に物語るものとして大学美術館に収蔵される。

 

『サロン・ド・プランタン賞』

1947年頃から日本に駐在していた、ベルギー国代理大使(総領事)シュバリエ氏の夫人を中心とした外交官夫人などの美術愛好家グループが、若い芸術家の創作活動を支援するため資金を集め、パリのサロン・ドートンヌにならって、東京にサロン・ド・プランタンを創始した。その展覧会の入賞者に対してサロン・ド・プランタン賞を与えていた。

このグループの活動は、1954年頃まで続き、シュバリエ夫人の帰国を機として解散することになり、その資金を財団法人西欧学芸研究所(理事長 上野直昭)に寄託し、以後の支援活動について同研究所に引き継いだ。西欧学芸研究所はこの基金で、本学美術学部卒業作品の中から美術学部教授会が推薦した優秀作品に対して、賞状と記念品を授与して表彰してきた。その後、大学の優秀賞としてサロン・ド・プランタン賞を継続することとなり、今日に至っている。

 

『アカンサス音楽賞』

優秀な成績を得て音楽学部を卒業する者を顕彰する目的で、平成11年度に制定された。「アカンサス音楽賞」の名称は、本学の徽章に用いられているアカンサスに由来する。

受賞者は、各科等(作曲・声楽・ピアノ・オルガン・弦楽器・管打楽器・古楽・指揮・邦楽・楽理・音楽環境創造)からの推薦に基づき、音楽学部教授会で決定する。

 

『大学院アカンサス音楽賞』

優秀な成績を得て大学院音楽研究科を修了する者を顕彰するという目的で、平成22年度に制定された。「大学院アカンサス音楽賞」の名称は、「アカンサス音楽賞」同様、本学の徽章に用いられているアカンサスに由来する。

受賞者は、各専攻等(作曲・声楽・ピアノ・オルガン・弦楽・管打楽・室内楽・古楽・指揮・邦楽・音楽学・音楽教育・ソルフェージュ・応用音楽学・音楽文芸・音楽音響創造・芸術環境創造)からの推薦に基づき、音楽研究科委員会で決定する。


【参加学生】 ・買上作品賞受領代表者  YU SORA(大学院美術研究科 彫刻専攻) ・サロン・ド・プランタン賞受領代表者  池上 里佳子(大学院美術研究科 建築専攻) ・アカンサス音楽賞受領代表者  山上 紘生(音楽学部 指揮科) ・大学院アカンサス音楽賞受領代表者  加藤 美季(大学院音楽研究科 器楽専攻 古楽) 【撮影】 小野澤 峻(大学院美術研究科 先端芸術表現専攻1年)