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藝大リレーコラム - 第九回 宮北千織「言葉にできないこと」

連続コラム:藝大リレーコラム

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第九回 宮北千織「言葉にできないこと」

2年前から日本画の教員として再び東京藝大に通うことになりました。学生さん達と接しながら、私が日本画を学び始めた学部の頃のことをよく考えます。

2浪して藝大に入りました。昭和63年のことです。­­
初めて触れる日本画の画材には本当にわくわくしました。画材の扱い方や基本的な技法を教わるのが楽しく、古い技法書を読んでいろいろと試してみるのに飽きることはありませんでした。
面白かったのは、教わる先生によって画材の扱い方が微妙に違っていて、例えば膠の濃度は様々でした。その違いをそれぞれの先生方の画風と照らし合わせてみると、なるほど、と思うところがあり、いつも基本的な説明が終わると「あとは自由にやってみなさい」と放っておかれるのも納得がいくのでした。小指の先ほどの量とか、耳たぶほどの固さといった言い回しで、何グラムとか言い切らない振り幅が好きですが、その差を感じ取ることのできる感覚が大切だと思っています。

作品に対する指導で強く心に残っているのも感覚的なことです。「もう少しなんだけどねぇ」とか、「もっと心を落ち着けて描きなさい」とか、当時はこれ以上もう描けないというほど描いているのに、何がもう少しなのかその意味が全く理解できませんでした。だからといって、どういうことかと質問してしまうのも違うと思いましたので、考えるより他ありませんでした。今では、それが非常に良かったと思っています。
勿論、ここはこうした方が良いとか具体的な指導もされましたが、これについては失敗しても良いから思った通りやってみる学生でした。

卒業制作は自身の転機となりました。東北のスケッチ旅行で見つけた風景が忘れられず、4年生の夏休みにもう一度そのコースを辿り取材しました。風景を描こうと思っていました。
夏休み明けの小下図研究会で、4年の担任であった加山又造先生に見て頂いたところ「風景っていうのは難しいねぇ…」と一言おっしゃいました。ああこれは、この絵ではダメだということだ、と思い、姉をモデルにして人物画を描くことにしました。人物を通して等身大の自身の想いのようなものが描ければと考えたからです。これが、今現在の制作にも続くものとなっています。
制作中は、当時学長でいらしたので普段は指導に来られない平山郁夫先生や、客員教授であられた高山辰雄先生もお見えになり、非常に緊張したのを思い出します。
平山先生はよく、野球などのスポーツに例えて考え方の話をして下さいました。

基本をしっかりと身に付けた上で、何かを作り出すために日々試行錯誤している者だからこそ、言葉では伝えきれない何かをつかみ取ることが出来ると思っています。藝大はそれを教えてくれました。


卒業制作「室内」150号 サロン・ド・プランタン賞 台東区長賞

 

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【プロフィール】

宮北千織
美術学部絵画科日本画専攻 准教授 東京生まれ。 1992年、東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業。1997年、東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程(日本画)単位取得退学。 1994年、再興第79回院展《室内・夜》が初入選。2002年、再興第87回院展《うたたね》日本美術院賞(大観賞)受賞など受賞多数。 文星芸術大学教授等を経て2018年より現職。日本美術院同人、文星芸術大学特任教授も務める。