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藝大リレーコラム - 第十二回 深井隆「東京藝術大学での長い、長い、年月」

連続コラム:藝大リレーコラム

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第十二回 深井隆「東京藝術大学での長い、長い、年月」

東京藝術大学との関係は、年齢から20年をひいた年数になる。2年浪人して入学した藝大にこんなに長くいるとは誰が思っただろう。そもそも、彫刻家とはどうゆう人なのか全く知らないで、建築家を目指すのを止め、なぜか彫刻科を受験し、何とか入学でき、だんだんと彫刻の魅力に気づき、発表を始め、助手になり、教員になり、ずっと藝大とそして彫刻と関わってきた。その間、澄川喜一先生という恩師に恵まれ、多くの優秀な後輩の彫刻家たちと展示や議論などの楽しい時間を過ごし、若い学生のエネルギーに触発された47年間だった。確かに長かったけれど、本当に長かったのだろうか?あっという間だった?という気もする。「時間」というものの不思議さをあらためて考えてしまう。藝大彫刻科での事は、芸術学科出身のDの3行目というグループと知り合い、彼等が「東京藝術大学の彫刻と深井隆 1951~(2018)~」(東京藝術大学出版会)という、恥ずかしくなるようなタイトルの(2018年秋の大学美術館での退任展に合わせて出版してくれた)厚い本の中に書いてあるので、細かいことはそちらに譲る。藝大(彫刻科は)、日本の秘境?なんかでなく、多くのことが学べる、素晴らしい所だと断言できる。

昨年3月に定年で藝大を去ることになっていたが、実は今も在職中から関わっていた藝大COIという組織に特任教授として所属している。COIでの私の役割は、「スーパークローン文化財」と名付けられた、絵画、壁画、彫刻などの、この上ない精密な複製品を制作する部署で、若い研究員と一緒にそのスーパークローン文化財を通して、新しい文化財の保護・活用法を実践することだ。それはなかなか楽しいし、世界に貢献できる可能性を感じている。

春、桜の花が咲く頃になると、藝大にまつわるいろいろな思いが走馬灯のように頭の中で巡る。上野公園、谷中の墓地などの桜の名所を毎年見てきたせいだろう。この季節、卒業と入学、別れと出会いを経験してきたことにもよる。藝大に関わった人は誰もこの季節、同じ様な思いを巡らせるのではないだろうか。

還暦(2011年)彫刻科の木彫室のスタッフ、学生が作ってくれた西郷深井隆盛像

 

写真(上):2018年、藝大美術館、「退任記念 深井隆展 ―7つの物語―」会場

 

 


【プロフィール】

深井隆
東京藝術大学COI拠点特任教授 1951年 群馬県高崎市に生まれる 1976年 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業 1978年 東京藝術大学大学員院美術研究科彫刻専攻修了 1985年 文部省在外研究員として英国・ロンドンに9ヶ月滞在(王立美術学院RCA) 1989年 第14回平櫛田中賞受賞 1994年 東京藝術大学美術学部彫刻科助教授 2005年 東京藝術大学美術学部彫刻科教授 2013年 紫綬褒章を受章 2019年 東京藝術大学名誉教授/COI拠点特任教授