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藝大リレーコラム - 第十五回 富澤優夏「今を乗り越えて」

連続コラム:藝大リレーコラム

連続コラム:藝大リレーコラム

第十五回 富澤優夏「今を乗り越えて」

新型コロナウイルスが流⾏し、外出⾃粛を求められるようになってから数ヶ⽉が経つ。⼤学ではいよいよオンラインでの授業やレッスンが始まった。いつもとは違う環境での取り組みにあたふたしながらも、この⽣活にもだんだんと慣れてきた。新たなウイルス感染者数も徐々に減ってきており、元の⽣活に戻れる事を今か今かと⼼待ちにしている。しかし現状は厳しく、何をするにも感染症対策は必要になってきそうだ。つい最近まで当たり前のように過ごしていたこの⽣活から、未知のウイルスが世界中に広がって⾏くのをこの⽬で⾒て、⽣活していた今までの⽇常は奇跡だったのではと思うほどだ。

今年に⼊ってから、あらゆる⾏事やイベント、演奏会などが延期や中⽌になった。オリンピックも初めての延期が決定し、⽣き甲斐のように楽しみにしていた地元のお祭りは中⽌になった。時を同じくして藝祭も中⽌が決まった。藝祭の中⽌が決まったとき、本⾳を⾔えばとても悔しく、そして悲しかった。この状況ではしょうがないと頭では分かっていても、毎年待ち遠しくしていたあの藝祭が…⼤学4年⽣になり最後だったので本当に残念だ。時が過ぎ落ち着いたら、企画していた演奏のものなど何処か違うところで実施出来たらいいなと思う。それまでは、より良いものになるよう時間を掛けて企画を練ろうと考えている。

緊急事態宣⾔が出される前から早々に、運よく地⽅の実家に帰っていたので4 ⽉5 ⽉と今までは無かったようなゆっくりとした⽣活を過ごしてきた。このコロナの騒動が無ければ、家族が皆揃って2 ヶ⽉間も過ごせるなどもう叶わなかったかもしれない。そう考えれば、この⾃粛期間は⾃分の思うように楽器の練習が出来たり、⾊々な事をゆっくり⾒直せたり休んだことで良いリフレッシュにもなった。この⾃粛期間を何も出来ないとネガティヴに考えるのではなく、今何が出来るか、と⾃分ができる事を探して時間を有効活⽤していきたい。

このたった数ヶ⽉間もの間だが、学校でのいろんな場所から聞こえる様々な楽器の⾳や歌声を聞けていないだけでとても寂しい。今年は⼊学式も中⽌となってしまったので新⼀年⽣にも会えていない。私が⼤学で学んでいる篠笛という楽器は⼀⼈でもメロディを演奏できるが、⼀⼈きりで練習をしている期間が⻑いからか、早く仲間達と合奏がしたいと強く思う。リモート演奏という⼿もあるがやはり⽣の演奏で、⾳と⾳の重なりをこの体で感じたいのだ。当たり前に仲間達としていた演奏がこんなにも待ち遠しくなるとは、⼀回⼀回の演奏をもっと⼤切にしていきたいと思った。

今年は何かといつものような⽣活は送れないかもしれないが、許される範囲での最後の学⽣⽣活を楽しみたい。少しずつこの騒動も緩和されつつあるが、まだ何をするにも我慢我慢の連続の⽇々だ。しかしその我慢が、先の未来では役に⽴っていると願っている。


(東京藝術大学音楽学部邦楽科4年富澤優夏)

 

写真(上):2019年藝祭 邦楽科大演奏会(3列目右から3番目が筆者)

 


【プロフィール】

富澤優夏
群馬県出身 幼少期から沼田祇園祭囃子の太鼓、篠笛を始める。 全国こども民俗芸能大会に出場。 笛を中川善雄に、囃子を藤舎千穂、三味線を東音 新井康子に師事。 2017年東京藝術大学音楽学部邦楽科に入学、現在大学4年に在籍。