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藝大リレーコラム - 第二十七回 八谷和彦「チャンスしかない」かもしれない。

連続コラム:藝大リレーコラム

連続コラム:藝大リレーコラム

第二十七回 八谷和彦「チャンスしかない」かもしれない。

「藝大リレーコラム ~新型コロナウイルス感染拡大の今、何を思うか~」というお題でエッセイを書くことになりました。何を思うか、と問われると「チャンスしかない」ってことですかね。

今日は実は大学の広報誌「藝える」の取材だったのですが、4月〜5月ぐらいのオンライン講義の準備でものすごく忙しかった頃のことをオンラインワーキンググループの先生達(岡本先生、亀川先生、桐山先生)とZoomで話していました。

4月〜5月頃は私たち教員にとっても、学生さんたちにとっても大変な時期でしたが、同時に世界中が混乱していて、先の見えない不安で世の中が苛立っていたようにも思います。そこから数ヶ月たって事態は大きくは変わっていないようにも思いますが、「先が見えない」「どうなるか予測がつかない」という状況からはやや脱したようにも思います。

そんな今思うことは、状況的には一見大変なのだけど、そしておそらく経済的には今後もなかなか難しい状況は続きそうではありますが、若い人にはきっとチャンスもありそうってことですかね。
経済的に大変な業種は色々あります。例えば観光業や飲食業、ライブハウスやたくさんの人を集めていたイベント関係。またJRほか鉄道各社、航空会社各社は大赤字らしいですし、オフィスを解約する動きもあるので、オフィス系の不動産も大変でしょう。

でも、それらは「人員や不動産をたくさん抱えている」からこその大変さですよね。あまり表に出ていなくても、実はこのタイミングで成長した産業もたくさんあるはずですし、そういう会社にはしばらくチャンスが続くでしょう。例えば、ゲーム、映像配信、ネットやコンピュータ関連などはそういう業種です。

また、新型コロナウイルス騒ぎで大変、と言いつつ、学生の遠隔授業アンケートを見ると「通学の大変さから解放されて嬉しい」という意見もたくさん見受けられました。通勤に関しては私も同感ですし、都内の多くの人々は同じような気持ちだと思います。通勤ラッシュはもう体験したくない。過去にあった不合理さや過酷さから脱するためには、このくらいのインパクトが必要だったのかもしれません。

遠隔講義を色々試してみて、新しいアプリもたくさん覚えましたし、信頼できるYouTuberも見つけました。そのなかで授業を面白くする工夫なども見つけましたが、こういうのは昨年は全く予想していませんでした。今年に入って自宅はどんどんスタジオ化してきましたが、こうして自分なりに授業をわかりやすく、楽しくしていくのは気持ちも上がります。ひょっとしたら後期にはいったら、アバターで授業やってるかもしれません。

また、Matterportという展示会場をVR化してスマホやWebなどで見せるやり方も何回か実際に試して覚えました。業者に頼むと数十万円の費用がかかるようなことなのですが、自分たちでやればノウハウもたまります。こういうのは、学生や助手の皆さんと一緒に、いろいろ実験していきたいですね。将来は仕事にできるかもですし。

地球に小惑星が激突して恐竜が死に絶えるような事態になったとき、生き残ったのはネズミくらいのサイズの小型哺乳類でした。

小さくて小回りがきいて柔軟であること、余計な物をもっていないことは、実はこういう変革期には強みになるはずです。若い人たちは、柔軟に考えて行動したら、きっと今後の「パラダイムシフト後の世界」で通用する技術を身につけられるはずです。一緒に楽しくやっていきましょう。

 

写真(上):遠隔授業中の筆者

 


【プロフィール】

八谷和彦
東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授 メディアアーティスト。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業後、コンサルティング会社勤務を経て、株式会社PetWORKsを設立。2010年より東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授。