本日、東京藝術大学は創立129周年を迎えました。
創立以来、我が国の芸術文化の継承・発展に寄与するとともに、国際社会を指向した教育研究を展開し、国際舞台で活躍する数多の芸術家や教育者、研究者を育成・輩出することを通じて、世界屈指の総合芸術大学としての地位を確立してまいりました。
これもひとえに、学生や教職員、同窓諸氏をはじめ、各界各層からのご支援の賜物であると、心より感謝しております。
本学では、「世界の頂」を目指すことを公に宣言し、過去に例のない大学改革を推進しており、とりわけ、芸術系大学としては唯一のスーパーグローバル大学、COI拠点としての使命や役割を踏まえ、教育研究活動の国際化、社会実装化に向けた新たな取組を断行し、目覚ましい成果をあげています。
例えば、本年度の実績だけを見ても、文部科学省からの支援として、「大学の世界展開力強化事業」における新規プログラムの採択や、附属音楽高等学校の「スーパーグローバルハイスクール」への指定をはじめ、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」や「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」等にも採択されていますが、これらはいずれも、国内の芸術系大学としては初となる先駆的な取組であり、国家戦略と連動しつつ、芸術文化を基軸とした、新たな地平の開拓に努めているところです。
グローバル人材育成に関しても、美術分野では、現在開催中の瀬戸内国際芸術祭を教育研究実践のフィールドとした「グローバルアート国際共同カリキュラム」をロンドン芸術大学との連携により実施している他、音楽分野では、全国展開している早期教育プロジェクトを継続的・体系的に発展させるべく、中学生を対象とした「東京藝大ジュニア・アカデミー」を来年度より開設すべく準備を進めるなど、新たな教育システム構築に向けた斬新な試みを推進しています。
国際活動に関しては、先日開催されたG7伊勢志摩サミットにおいて、本学COI拠点制作の高精細複製壁画「クローン文化財」が展示・紹介され、各国首脳から賞賛を受けている他、ASEAN・日中韓文化大臣会合等においても、映像分野において推進している映画・アニメーション分野の専門家派遣や「アニメーション共同制作」等の国際的な活動が紹介され、各国から多大な評価を受けるなど、国境を超えて、ソフトパワーとしての芸術文化力を活かした「芸術文化外交」を展開しています。
このように、多様な取組を全学的に推進することを通じて、芸術文化の持つ「無限の可能性」が今、新たなムーブメントとして開花しつつありますが、我が国が世界に誇る芸術文化力が、大きな広がりをもってグローバルに展開されようとしている、正に過渡期にあると言えるでしょう。
これらの動きを一層加速化すべく、本年7月には、「全国芸術系大学コンソーシアム」を設立したところであり、国内の芸術系大学が有する潜在力を活かした諸活動を展開していく他、大学の枠を超えて、医学分野や工学分野等他分野との融合や、産業界等との協働により、芸術文化のもつ未知なる可能性を探るべく、広く国内外の関係機関等とのパートナーシップの強化を進めていきます。
来年度は、創設より130周年目となる記念すべき年であることを踏まえ、同窓生をはじめとする大学関係者との緊密な連携協力関係を構築するとともに、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組を一層充実していくなど、今後も引き続き国家繁栄に寄与するとともに、大学の国際プレゼンスを世界最高峰へと高めるべく、全身全霊で邁進してまいります。
平成28年10月4日
東京藝術大学長 澤 和樹