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平成31年度入学式(4/6) ―「狭き門」をくぐり抜けてきた皆さんへー

2019年04月09日 | イベント, 全て, 大学全般

日時:平成31年4月6日(土) 11:00~11:40
場所:奏楽堂

式次第
1.奏楽
2.入学許可
3.学長式辞
4.役員等紹介
5.奏楽

 4月6日(土)、11時より奏楽堂にて平成31年度入学式が挙行されました。音楽学部 中木健二准教授らによる「バリトン三重奏曲 第97番ニ長調より I  アダージョ・カンタービレ、II アレグロ ディ モルト(フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲/河野文昭編曲)」が演奏され、優雅な雰囲気のなか式は幕を開けました。
 今年の新入生は、学部473名、大学院修士課程426名、大学院博士後期課程58名、大学別科29名の総勢986名。

 式辞に先立ち、澤学長のヴァイオリンと音楽学部 廣江理枝教授のオルガンの共演による「アヴェ・マリア(バッハ=グノー作曲)」が演奏されました。

 式辞では、本学のモットーのひとつである「温故創新」の精神を、バッハ=グノー作曲の「アヴェ・マリア」を例に紹介し、総合芸術大学のメリットを生かして専門分野以外の学生や教員とも積極的に交流を図るよう、新入生を激励しました。また、正門再生プロジェクトなどの最近の取り組みを紹介し、今後の様々なプロジェクトにおいても先輩や卒業生、教員らとともにオール藝大で臨み、本学の伝統へと繋がってゆくようにと期待を述べました。

 閉式は中木健二准教授らによる「4つのチェロのための2つの小品より II Dance(踊り)(ヨーゼフ・ヨンゲン作曲)」が演奏され、会場は拍手と喝采に包まれました。

平成31年度入学式 学長式辞

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日ここに皆さんを東京藝術大学の一員として迎えられたことを大変嬉しく思い、心よりお祝いを申し上げます。

 ご列席のご家族の方々にも、心よりお慶び申し上げます。

 ただいま音楽学部の廣江理恵先生による東京藝術大学奏楽堂が誇るパイプオルガンとの共演で聴いていただいたのが、バッハ=グノーのアヴェ・マリアです。バッハ=グノーというのは一人の作曲家の名前ではなく、音楽の父と称えられるヨハン・セバスチャン・バッハが、1722年に作曲した平均律クラヴィーア曲集・第1巻のプレリュード ハ長調という記念碑的な作品を伴奏とし、フランスの作曲家、シャルル・グノーが1859年にラテン語の聖母マリアを讃える祈り「アヴェ・マリア」を歌詞に用いて完成させた声楽曲です。13~4世紀から伝わるラテン語の祈祷文とバロック時代の鍵盤楽器の古典の名作を137年後にグノーが、素晴らしい歌曲として新しい生命を吹き込んだ名作で、ヴァイオリンやチェロなど様々な楽器でも演奏されます。ちなみに原曲となったバッハのプレリュードの事は、今朝のNHK「チコちゃんに叱られる!」で、宇宙に向けて、人類を代表する音楽として紹介されていました。(なんとタイムリーな!)

 皆さん「温故知新」という言葉をご存知でしょうか? 中国の思想家、孔子の言葉「温故知新」(ふるきをたずねて新しきを知る)にあやかり、ちょうど2年前の入学式で私は「温故創新」「ふるきをたずねて新しきをつくる、もって藝大生たるべし」と、藝大生となったからには、伝統をしっかり学んだ上で新しい出会いを大切にし、更なる創造に結びつけてもらいたいという想いを込めて新入生に贈りました。そして「温故創新」は、藝大にとっても、重要なモットーでもあります。

 先ほどのバッハ=グノーのアヴェ・マリアは、まさに古典と革新の出会いによって生まれた名曲であり、「温故創新」の精神につながるものだと思います。

 美術、音楽、映像、そしてアートマネジメントなどを担う国際芸術創造研究科も含め、世界でも稀な総合芸術大学のメリットを生かして、他分野との交流や融合で、これまでにない新しい芸術表現を模索しています。「温故創新」の藝大の日本酒も作ってしまいました!

 皆さんも東京藝大の新しいメンバーとして、是非、専門分野以外の学生や先生方とも積極的に交流してみてください。

 藝大では、昨年度末にタグラインを学生や教職員、卒業生から募集しました。タグラインとは、企業名やブランド名に付随して付けられるメッセージで、「おねだん以上○○」とか「やめられない、とまらない○○○」とか、自然に企業名や商品名に結びついてしまう強いメッセージ性を持っています。藝大タグラインの募集は、短期間でしたが、230を超える応募があり、すでにクリーム色の表紙の冊子にまとめられて配布されているので、ご覧になった方も多いと思いますが、代表的なものをいくつかをここでご紹介したいと思います。

  決定タグライン:世界を変える創造の源泉

  学長賞:藝teway to 大versity

 つまり多様性への入口というメッセージに藝大という漢字をうまく浮かび上がらせています。

  美術学部長賞:『違う』がフツーの学校です。

 (藝大アートプラザのCMが上映され)学長や学部長が小学生の格好をしていても、何事もなかったかのように通り過ぎるチェロの学生たち……。さすが、『違う』がフツーの学校です。

  音楽学部長賞:熱くてわるいかっ! 全力GEIDAI

  映像研究科長賞:最高を「日常」にする

  国際芸術創造研究科長賞:アートを愛し、アートで世界を変える者たちを世に送り出す船

 学長特別補佐賞は、このタグライン募集をディレクションしてくださった、美術学部デザイン科教授で広報・ブランディング戦略担当の箭内道彦先生に選んでいただきました。

  The super cannon to break through occlusive world 
  (閉鎖的な世界を打ち破る巨大な大砲である)

 私もいくつか考えてみました。

  革新を生み、伝統に育てる

  日本文化の先端を世界の末端へ

  藝はmeを助ける

  ゲ! 偉大!

 是非、皆さんもそれぞれの藝大のブランドイメージを、タグラインの形で言葉に表わしてください。


 つい先日、「東京藝大正門再生プロジェクト」が立ち上がりました。ご覧のようにレンガ造りで、藝大の歴史と風格を感じさせてくれる正門は、昨年6月の大阪北部地震の際に倒壊したブロック塀で小学生が犠牲になった事を受けて調査したところ、安全性に疑問があるという事で、大きな地震の際に想定される被害を最小限に留めるために、現状のように鉄冊と網で囲って応急処置がされていて、入学記念の撮影をするにはちょっと残念な状態です。一刻も早く、耐震性にも優れ、藝大のシンボルとしての機能を取り戻し100年先の藝大生に遺すためにも、クラウドファンディングで広く協力を呼び掛けています。本プロジェクトでは、多くの方々からの想いも一緒に受け継いでゆくことが大切だと考えており、再生工事に先駆け、正門や藝大に対する想いを募集しています。

 今日という良き日を迎えられた喜びや今後の抱負など、熱い思いを是非、皆さんも正門前のノートに書き込んでください。 私はこの機会に、正門をもう少し広げてはどうかと提案したのですが、「いや、やはり藝大の門は狭き門でなければいけない」という事で却下されてしまいました。

 その「狭き門」をくぐりぬけてきた皆さんは、藝大生としての誇りを持ってこれからの充実した学生生活を送ってください。この正門再生プロジェクトは今朝の東京新聞で大きく取り上げられていました。(これまた、なんとタイムリーな!)

 さて、2020年のオリンピック、パラリンピック東京大会がいよいよ目前に迫っていますが、オリンピック、パラリンピックは、スポーツの祭典であると同時に文化芸術の祭典でもあります。

 この機会に世界から注目を浴びる日本の芸術文化を発信するため、これから3年間にわたり全国各地で「日本博」が展開されますが、東京藝術大学に寄せられる期待は極めて大きなものがあります。皆さんも東京藝大の一員として、先輩や卒業生、先生方とともにオール藝大での中心的存在となって活躍していただきたいと思います。

 これからの学生生活で皆さんの豊かな感性が更に磨かれ、東京藝大の伝統に繋がってゆくことを大いに期待して私の式辞といたします。本日はおめでとうございます!

平成31年4月6日
東京藝術大学長  澤 和樹